イングランド銀行がMPCの議事録発表を準備
英国の中央銀行であるイングランド銀行は、金融政策委員会(MPC)の議事詳報を作成・公表することの是非を検討する作業部会の責任者として、ウォーシュ元米連邦準備理事会(FRB)理事を指名したそうである(ロイター)。
イングランド銀行では現在、MPCの議事を録音、それを活用して議事要旨を作成しているものの、数週間後の議事要旨公表とともに録音テープを破棄する。つまり議事の様子を一語一句記した記録は保存されていないそうである(ロイターの5月1日の記事「中銀、政策委の議事詳報公表の是非検討へ 元FRB理事招へい」より引用)。
日銀は、金融政策決定会合の議事要旨を、次回の決定会合で承認のうえ、その3営業日後に公表している。また金融政策決定会合の議事録は、各金融政策決定会合から10年を経過した後に、半年分(1月から6月分、7月から12月分)ごとにとりまとめて、年2回公表している。
米国のFOMCでは議事要旨(Minutes)は会合の約3週間後に、議事録(Transcript)は5年後に公表されることになっている。
ECB政策理事会の場合には、議事要旨は公表されていない。しかし、議事録は作成・保存されており、その議事録は30年後に発表されるようである。
イングランド銀行は、会合の2週間後に議事要旨が公表されるが、議事録の基となる録音データは破棄されていることは知らなかった。ここれでは議事録を発表することは物理的に困難となる。
中央銀行の金融政策の透明性をはかる上では議事要旨だけでなく、実際にどのようなやり取りがされていたのかを発言者も明らかにした議事録の発表は必要であると思われる。日銀はすでに10年前の会合の議事録を発表しているが、生々しいやり取りが行われていたことがわかる。このあたりは議事要旨では伝え切れていないし、要旨にまとめる際に発言そのものをオブラートに包むなりすることも可能である。
金融政策を分析するには議事要旨だけでは不十分であり、議事録を確認する必要がある。できればもう少し早く発表してほしいが、発言者がまだ現場に残っていると何かと影響が出る恐れもあってか、日銀は10年後の発表としている。
しかし、世界の中央銀行の基になったとされるイングランド銀行が、その議事の内容を残していなかったことに驚いた。ECBも議事録の早期の発表や、議事要旨の発表を検討しているとされており、イングランド銀行も議事録の必要性を意識したのであろうか。それだけ中央銀行の金融政策の重要度が増してきているということなのかもしれない。