資金を運用する際に常に意識しなければいけないのがリスクである。少なくとも元本を毀損することなく運用しなければいけない資金は、リターンをある程度犠牲にして運用する必要があることは言うまでもない。いわゆる安全資産での運用となるわけだが、その代表的なものとして預金がある。金融機関の運用先として最も安全な資金の保管先は日銀の当座預金となる。その代わりその金利は準備預金制度に基づく所要準備の分はゼロ、それを超える超過準備の分は以前はゼロだったが、現在は0.1%の金利が付けられている。

個人は日銀に口座を持つことができないため、日銀の当座預金に資金を置くことはできない。その代わりに我々は銀行などの預金口座を利用している。この口座において給与の振り込み、電気代や電話代等々の引き落とし、クレジットカードの決済等々も行っているが、この預金も利息よりも元金が保証されている面が重視されている。その銀行に何かあっても預金保険の対象預金(利息のつく普通預金・定期預金・定期積金等々)であれば、合算して元本1000万円までと破綻日までの利息等を保護される。また、決済用預金(当座預金・利息のつかない普通預金など)は全額保護される。

日銀の実質的なゼロ金利政策により、短期の金利はほぼゼロ近くなっており、預金金利は低い状態にあるが、安全性と決済の利便性を考えればある程度の資金を預貯金に置いておくであろう。民間銀行はこの預金の資金を元にして、貸出や国債などでの運用を行っている。定期預金の金利と同じ年限の国債の利回りに差があるのは、国債の価格変動リスクを銀行が負っているためである。

国債などの債券には価格変動リスクがある。つまり市場に入札などを通じて発行された国債は債券市場で売買されて価格が決まる。その価格は元本の100円を上回ったり、下回ったりする。ただし、デフォルトでもない限り、償還日には元本が返済される。これが株式や為替の価格変動リスクと異なる点となる。さらに国債は国が発行しているため、国内の金融資産では最も安全とされるものとなっており、だからこそ元本をなるべく毀損させてはいけない資金の運用の主体が国債になっている。当然、年金の運用も国債主体にならざるを得ない。国債と株と為替の価格変動リスクを同等にみるべきものではない。

国債など債券には、株などと同様に信用リスクも意識しなければならない。国が出しているから国債は安全だというのはおかしいとの議論もあるかもしれない。日本国よりトヨタのほうが安全ではないかとの見方もあるが、国と民間企業ではそもそもの土俵が異なる。トヨタはなくても別の自動車会社があるが、もし国への信用がなくなれば、国内で生活している限り、安心して経済生活を送ることはできなくなる。円とビットコインの信用の違いなどもここにある。

国債のリスクは他の金融商品に比べて低いことは確かであり、より安全性を求める必要のある資金はリターンよりもリスクの低いもので運用すべきというのは鉄則である。国債のリスクも残存期間に応じて異なる。期間の短い国債は期間の長い国債に比べて価格変動リスクは低くなる。リスクとリターンはこのあたりで調整すべきである。たとえば子供の将来の学資にあてるための資金を利子が少ないとかの理由で、リスクの高い金融商品にその資金を投じるであろうか。国債が絶対安全というわけではむろんないが、よりリスクを抑える運用のためには国債主体の資金運用は避けることはできないはずである。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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