日銀の追加緩和の可能性(異次元緩和一周年記念)

本日4月4日で昨年、日銀が量的・質的緩和政策、いわゆる異次元緩和政策を決定して一年が経過する。4月からは消費増税が始まり、リフレ派を中心にこれによる景気の落ち込みを懸念する声も強く、日銀の追加緩和を求める声も出ている。

日銀の追加緩和というが、実は容易なものではない。白川総裁までの日銀であれば、特に追加緩和のハードルは高くなかった。しかし、黒田総裁の日銀の追加緩和のハードルは、白川時代の「2倍」以上高くなっていると考えられる。

白川時代と黒田時代で何が変わったかといえば、気合い、ではなく期待に働きかけることを主眼に置いて、大胆な金融緩和政策手段を取ったことにある。ただし、この筋書きを書いたのは日銀ではなく、政権交代前の安倍自民党総裁であり、その原作は岩田現副総裁らリフレ派の方々。それを日銀の担当理事あたりが脚色し、演出したのが黒田総裁で、出演者は審議委員など政策委員の皆さんということになったのではなかろうか。

昨年4月4日の異次元緩和のキーワードは2倍であった。コアCPIの2%という物価目標に対しては、2年程度の期間を念頭に置いて、早期に実現するため、マネタリーベースおよび長期国債・ETFの保有額を2年間で2倍程度とし、長期国債の平均残存年数を現行の2倍以上とするとした。この2倍という数字は、今年2月の会合で決定した「貸出増加を支援するための資金供給」と「成長基盤強化を支援するための資金供給」の変更でも使われた。規模を2倍としたうえで、1年間延長することを決定したのである。

昨年4月に決定した異次元緩和は「バズーカ砲」にも例えられた。これは別に音だけデカくて効果は薄いという意味では、たぶんない。とにかく市場心理に影響を与えようと、量を出してしまったので、そう何度も打ち出せるものではないとの意味合いを兼ねたものとなった。そうであればバズーカ砲というより戦艦大和の46センチ砲のような気もするが、それはさておき、黒田総裁は異次元緩和後は戦力の随時投入はしないとも語り、現実に異次元緩和以降、1年にわたり金融政策の変更はなかった。

一度、サプライズを起こしてしまうと、二度目のサプライズは難しくなる。異次元緩和と同様に、さらに倍の金額の国債を買い入れるとなれば、それでなくても一時機能不全に陥り、現在でも流動性が完全に回復したとは言いがたい債券市場に影響を与えるだけでなく、財政ファイナンスではないかとの懸念を強めさせることにもなりかねない。それは出口政策をより一層、困難にさせることになる。

日銀の異次元緩和はどのような効果があったのかの検証はさておき、外為市場や株価の動きを見る限り、日銀の異次元緩和はサプライズというより、政府の言うとおりにやってしまったのか、というショックも大きかった。つまり、アベノミクスへの援護射撃的な意味合いが大きかった。すでに2012年11月の政権交代期待と安倍氏の輪転機発言で急激な円安は始まっていた。それで株価も上昇していた。この円安が予想以上の物価上昇を招いたことは確かである。

つまり円安による物価上昇の効果を意識すれば、今後の追加緩和政策は米国の動向を横目で見ながらも、円安に働きかける政策が必要となる。追加緩和への市場の「期待」は裏切るわけにもいかない。それではどのような手段が講じられるのか。欧米の中央銀行はこれに対してフォワードガイダンスを持ってきた。日銀は異次元緩和では2年という縛りを自ら設けたが、そうであれば2%の目標は達成できるとの自信を見せた上で、超緩和策は2%達成後も相当の期間続けることを示すような政策を取ってくるのではなかろうか。さらに市場に見透かされないためには、それ相応の見栄えのするものも必要になる。何も総裁が割烹着を着る必要はないが、デフレファイターであることを意識させるべきものも必要となろう。それが何であるのか、私にはいまのところ想像できない。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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