Yahoo!ニュース

翻弄されやすい相場に

久保田博幸金融アナリスト

1月29日の東京株式市場で日経平均は400円を超す上昇となったが、30日の東京株式市場は今度は500円を超す下げとなった。いったい何が起きているのであろうか。

現地時間の28日にトルコ中央銀行が利上げを決定したことをきっかけに、リスクオフの動きが反転し、売られていた新興国通貨が買い戻され、買われていた円も下落し、東京株式市場も急反発した。

ところが、トルコ中銀の利上げだけでは新興国の通貨売りの流れは収まらなかった。29日には南アフリカの中央銀行が自国からの資金流出を防ぐ目的で、政策金利を5%から5.5%への引き上げを決定した。利上げは2008年6月以来、5年7か月ぶりとなったが、それでも通貨安に歯止めが掛かったのは一時的であり、再びトルコ・リラや南アフリカのランドは下落した。中央銀行による利上げだけでは通貨の下支えとはならず、むしろ金融引き締めで景気が減速するのではないかという懸念も強まった。

28日~29日のFOMCでは予想通りに量的緩和策による証券購入額を100億ドル減らし、月650億ドルにすることを全員一致で決定した。一時的に雇用が悪化しようが、新興国の通貨が下落してリスクオフの動きが強まろうが、あまり目先のことにはとらわれず、淡々と異例の量的緩和を縮小させていく姿勢を見せた。ただし、FOMC後の声明で、特に最近の新興国通貨の動揺に言及しなかったこともあり、これはむしろリスクオフの動きを強めさせる要因となったようである。

ここにきて大きな動きを見せている米国のダウ平均や日経平均、ドル円などの動きをみると今年初めから新たな動きが出ていることは確かである。この要因として新興国の通貨下落なども当然あるかもしれないが、むしろ昨年末までの円安株高といった動きの反動が出ている可能性がある。

新興国の通貨下落による影響はまったく無視できるものではないが、経済規模などを考えると、トルコや南アフリカ、アルゼンチンなどの経済が大きく悪化したとしても、ユーロというシステムの崩壊も意識されたギリシャ・ショックに比べるとさほど大きくはない。

1997年~1998年のアジアやロシアの通貨危機のような危機が発生する可能性もないとはいえないが、現状はそれほどリスクが高いようには見えない。ただし、1997年~1998年の通貨危機の際には、ジョージ・ソロスのクオンタム・ファンドなどのヘッジファンドによりタイ・バーツなどの通貨が狙い撃ちにされており、今回の新興国通貨の下落も、同様の仕掛が入っていた可能性もある。

ダウ平均や日経平均の現在の日足チャートを見ても、買いよりも売り崩すほうが、スピードが乗りやすいように見える。新興国の通貨の動向も注意すべきではあるが、それに日経平均なども翻弄されやすい状況にあることにも注意が必要となる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事