12月の米雇用統計とテーパリング
1月10日に発表された12月の雇用統計によると、非農業雇用者数(NFP)は前月比7.4万人増となった。天候が大きく影響したとの指摘もあったが、予想の20万人程度を大きく下回った。ただし、前月分は24.1万人増と速報値の20.3万人増から上方修正され、家計調査に基づく失業率は2008年10月以来の水準となる6.7%に低下した。この失業率の低下は、労働参加率の低下が影響したことが影響した。
ブルームバーグによると、悪天候の影響で就業不能となった労働者は27万3000人で、12月としては1977年以降で最悪だった。気象データ提供会社プラナリティクスによると、先月は12月としては2009年以降最も寒く、降雪量は平年より21%多かったとのコメントがあった。悪天候がわかっていたはずだが、市場のNFPの数字予想はプラス20万人とあった。
市場予想と現実の数字とのギャップは大きかったが、ちなみに米雇用統計の予想をするために作られたとされるADP民間部門雇用者数の12月の数字は23.8万人増となっており、こちらも結果としては参考数字とはなっていなかった。
もし12月のFOMCでテーパリングの決定がなされていなかったとすれば、市場はどのような反応をしたであろうか。12月の雇用統計は天候という特殊要因があったとしても、予想を大きく下回ったことは確かであり、失業率が改善してとしても職探しを諦めた人が多いためとなれば、雇用が改善したとは言えない。1月のFOMCでのテーパリングの決定は難しくなり、イエレン議長の新体制となってから、テーパリングは開始されるであろうとの見方が強まった可能性がある。つまり、この雇用統計により株式市場は下落するどころか、上昇していた可能性もあった。
歴史にもしもはありえない。しかし、それを想定してみることは面白い。12月に大方の予想に反して、バーナンキ議長がテーパリング開始を決断しなければ、開始そのものがさらに先送りされた可能性がある。ところが、いったん決定してしまうと、たとえ雇用統計が予想より下振れても、いまさらテーパリングの開始には影響はないとの見方が一般的となる。このあたりも市場心理を研究するのに面白いテーマとなるかもしれない。
気候による一時的な影響であったのかは、あとから確認できよう。しかし、それとFRBのテーパリングの開始には直接的な影響はなかった可能性もある。ひとつひとつの経済指標で金融政策が毎度ぶれるようなことがあれば、それはそれで問題であろう。
フィラデルフィア連銀のプロッサー総裁とダラス連銀のフィッシャー総裁は、12月の米雇用統計は弱かったものの、テーパリングを支持する考えを示したそうであるが、これは両者に限らず、FOMCメンバーの総意に近いのではなかろうか。12月のテーパリング開始決定については、そのチャンスをうかがっていたとみられ、市場に意外感をさほど与えないためにも、11月までの雇用の回復はそのチャンス形成に大きな役割を果たしたことも確かである。バーナンキ議長としては、してやったりといったところであろうか。