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コアCPIは前年比プラス1%台に

久保田博幸金融アナリスト

12月27日に発表された11月の全国消費者物価指数(除く生鮮食料品、コア)は、前年同月比でプラス1.2%となり、2008年11月以来5年ぶりに1%台に乗せた。市場予想は1.1%近辺となっており、それもやや上回った。食料(酒類を除く)及びエネルギーを除く総合指数(コアコア)は、前年同月比でプラス0.6%と、こちらは15年3か月ぶりの上昇となった。

昨年12月からのコアCPIの前年同月比の推移をみると、昨年12月がマイナス0.2%、今年3月にマイナス0.5%まで低下していたが、そこから次第に上昇し5月には0.0%、6月に0.4%、7月は0.7%とブラス幅を拡げ、11月に1.2%と1.0%台に乗せてきた。

コアコアに関しても昨年12月はマイナス0.6%となっており、今年2月にはマイナス0.9%まで低下していた。こちらもそこからマイナス幅を縮小させ、9月に0.0%となり、11月はプラス0.6%まで回復している。

総合指数の前年同月比に寄与した主な内訳をみると、前月と同様に電気代や自動車等関係費が上げられている。原発停止の影響による電気代の上昇と、ガソリン価格の値上げ、傷害保険料の引き上げ、外国パック旅行価格の上昇などが要因となっている。

4月の異次元緩和というよりも、昨年11月のアベノミクスの登場による急速な円高調整による影響は確かに大きい。円安の影響とともに、原発問題に絡んだ電気代の上昇、世界的なリスクの後退に伴うエネルギー価格の上昇、円安の影響もあり輸入の割合が高いパソコンやタブレット端末の価格の上昇、液晶テレビなどの価格下落が止まったことも影響している。いまのところ、景気全体の底上げにともなう賃金上昇等の影響を受けての価格上昇というより、傷害保険料の引き上げなども加わって1%台に乗せてきたといえる。

問題はここからである。コアCPIの予想としてはそろそろピークアウトし、年度内は1%近辺に止まる見込みとなっている。消費増税の影響を除くと5月以降は鈍化するとの見方もある。ただし、4月以降は消費増税の影響をどの程度と見極めるのか。内税となっている場合などを含めその作業もなかなか困難であり、とりあえず消費増税の影響も加味して物価そのものが上昇していくことで、デフレ脱却がイメージされるかもしれない。

26日に安倍首相は日銀の黒田総裁と会談し、その際、黒田総裁は日本経済が2%の物価上昇目標に向け順調に推移していると説明した。ただし、まだ道半ばであり、完全に(デフレ脱却)との状態ではないとし、2%の物価安定目標を実現しそれが安定的に持続できるまで現在の金融緩和を続けていきたいと語ったそうである。

コアCPIは前年比1.0%台に上昇し、予想も上回ったものの27日の債券市場はこれによる影響はあまり受けていない。日銀の国債買入による需給面の影響もあろうが、動揺を示さぬあたり、日銀の掲げる2%の物価目標の達成は困難との見方も強いのか。ドル円は27日に105円台に乗せてきたが、こちらも目標達成困難のため日銀による追加緩和期待が背景にある。数字だけでみれば、CPIは順調に日銀の目標に向かっているかにみえる。しかし、マーケットの反応は、どうもそう結論づけているわけでもなさそうである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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