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9月末の国債の投資家別シェア

久保田博幸金融アナリスト

12月19日に日銀は2013年6~9月期の資金循環統計を発表した。これによると2013年9月末時点の家計の金融資産は1598兆1565億円(2013年6月末速報値1590兆1054億円)に増加した。これは四半期ベースでみると2007年6月末に次ぐ規模となる。株価の上昇による影響が大きかったとみられる。

この資金循環統計を基に、2013年9月末時点の国債保有者別の残高と全体に占める割合を算出してみた。ただし、これは国庫短期証券を含んだものではなく、国債・財融債のみの数値を個別に自分で集計し直したものである。一般的に国債の保有者の割合としては、こちらの数値が使われることが多い。

9月末の国債(国債・財融債のみ)の残高は、817兆6857億円(6月末799兆7521億円)と前回の6月末から17兆9336億円増加した(速報ベース)。国庫短期証券を加えると約980兆円となる。参考までに日銀の資金循環統計の数値は額面ベースではなく「時価ベース」となっている。

銀行など民間預金取扱機関 293兆4269億円(6月末292兆8944億円)、35.9%(同36.6%)

民間の保険・年金 221兆7273億円(同217兆8053億円)、27.1%(同27.2%)

日本銀行 128兆4982億円(同111兆9663億円)、15.7%(同14.0%)

公的年金 69兆0849億円(同68兆7737億円)、8.4%(同8.6%)

海外 33兆0306億円(同33兆4195億円)、4.0%(同4.2%)

投信など金融仲介機関 31兆0690億円(同33兆9432億円)、3.8%(同4.2%)

家計 21兆9728億円(同22兆8585億円)、2.7%(同2.9%)

財政融資資金 6226億円(同4212億円)、0.1%(同0.1%)

その他 18兆2534億円(同17兆6700億円)、2.2%(同2.2%)

2013年6月末に比べて、残高が大きく増加していたのが4月4日の金融政策決定会合で量的・質的金融緩和、いわゆる異次元緩和を導入し大規模な国債買入を行うことになった日本銀行である。6月末比で16兆5319億円もの増加となっている。

3月から6月に向けて残高を大きく落としていた銀行など民間預金取扱機関は、6月から9月にかけては5325億円とやや残高を増加させた。国内銀行は2983億円の売り越しとなっていたことから、ほかの金融機関がその分をカバーしていたとみられる。

民間の保険・年金は3兆9220億円程度残高を増加させてきた。3月から6月にかけては残高を減少させたが、再び国債の残高を積み上げてきた。6月にかけての残高の減少には、国債市場の流動性が低下していたことも要因となっていた可能性がある。しかし、市場もだいぶ落ち着きを取り戻してきたことで、再び残高を増加させてきたとみられる。

公的年金は3112億円の増加であるが、今後はここの動向も気掛かり材料となる。3月から6月にかけては、銀行の売却を日銀とともにこの公的年金の買いで支えた格好となっていたが、買い支えどころか今後は売り手の代表となる懸念も出ている。

海外投資家は3889億円の減少となっており、長期国債のシェアは4.0%。国庫短期証券を含んだ数字で見ると、海外は全体の8.0%のシェアとなり6月末の8.4%からやや低下した。個人は8857億円の減少となり、長期国債のシェアは2.7%、短期債を含めたシェアは2.2%となった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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