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都銀は10月も国債を売り越し

久保田博幸金融アナリスト

日本証券業協会は20日に10月の公社債投資家別売買高を発表した。10月の債券相場は米政府機関の一部閉鎖などの影響も意識されたが、デフォルトに陥る事態は回避され、むしろFRBのテーパリング先送りとの観測などから米債が買われたこともあり、円債もしっかり。10月後半に債券先物は145円台をつけ、10年債利回りは0.6%割れとなっていた。

10月の公社債投資家別売買高によると、短期債を除いたベースで4月から9月まで売り越しとなっていた都市銀行は10月も3兆236億円の売り越しとなっていた。9月の売り越し額が5506億円程度と減少してきており、10月は買い越しに転じたのではとの観測も出ていたが、むしろ売り越し額は増加していた。

国債の投資家別売買高から内訳をみると、超長期債は2404億円の買い越しながら、長期債を2兆81億円売り越し、中期債を1兆2076億円の売り越しとなっていた。中期債は異次元緩和の4月からの売り越しが続いており、5月から9月にかけては買い越しとなっていた長期債を2兆円以上も売り越していた。10年債は0.6%を割る水準となり、利益確定売りを入れてきたものと思われる。

ちなみに、6月の都銀の国債の売買高(除く短期)は3兆5165億円と2004年4月以降では最低となっていたが、ここにきて徐々に回復してきており、9月は10兆4974億円と4月以来の10兆円台となり、10月は17兆1861億円にまで回復した。

他の投資家の10月の売買状況を確認すると、買い越しの最大手は9月に続き信託銀行となり、1兆606億円の買い越し。内訳は超長期債を3089億円、長期債を3145億円、中期債を2911億円と、それぞれ今回も満遍なく買い越しとなっていた。

続いて外国人が9929億円の買い越しに。長期債を4540億円、中期債を4683億円とそれぞれ買い越しに。

次に地方銀行が8773億円の買い越し。国債の内訳を見ると、超長期債151億円売り越し、長期債567億円買い越し、 中期債4953億円買い越し。どうやら国債以外(地方債?)もそこそこ買い越していたようである。

生損保は6759億円の買い越しに。こちらは超長期債を2268億円の買い越し、長期債は858億円の買い越し、中期債は2495億円の買い越し。

事業法人が4177億円買い越し、投資信託が3244億円買い越し、農林系金融機関は2765億円の買い越し。事業法人は中期債主体、投資信託は中期債と超長期債、農林系金融機関も超長期債と中期債主体に買い越しとなっていた。

参考までに国債の投資家別売買高(一覧)を基に、投資家全体の売買高の状況を確認してみたところ、7月は国債合計(短期債と割引債除く)で126兆9632億円となっていたが、8月は140兆円1549億円、9月は156兆1005億円、10月も149兆7425億円と異次元緩和以前の水準に回復しつつある。これだけで判断はできないものの、日銀の異次元緩和による国債市場の流動性の低下はかなり解消しつつあるように思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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