カーニー総裁登場でイングランド銀行は変わるのか

イングランド銀行では10年の任期を勤め上げたキング総裁に代わり、7月1日から先月までカナダの中央銀行総裁を務めていたマーク・カーニー氏が、外国人としては初めてイングランド銀行総裁に就任した。

マービン・キング前総裁は、英国が1992年にインフレ目標値を採用した際に関わっている。イングランド銀行のチーフエコノミストであったマービン・キング氏は、もともとインフレ・ターゲッティングに意欲的で、ニュージーランドの事例を研究していた。

英国ポンドがジョージ・ソロスらの投機筋により売り叩かれ、この結果、イギリスは1992年9月16日にEMRから離脱させられることになった。このブラック・ウェンズデーをきっかけに、英国は長期にわたる経済成長や低失業率とともに、歴史的にも低いインフレ率を享受、これをきっかけとしてイギリスはインフレ目標を導入する。ブラック・ウェンズデーから一週間もたたないうちに導入の基本路線が固まり新政策が生まれた。1992年10月29日に当時のラモント財務相がインフレ目標導入に伴う新政策の内容を発表したのである。この際のインフレ目標は年率1~4%とした。

実はイングランド銀行より前にインフレ目標を導入していたのがカナダである。カナダでは、1991年に連邦消費税を導入し、この導入による物価上昇は一時的ではあるが、インフレ期待が強まらないようにするため、政府とともに中銀がインフレ率の低下に取り組む姿勢を示す必要があった。

カナダ銀行(中央銀行)は、それまで為替レートや失業率等の指標を総合的に判断する裁量的な政策運営を行っていたが、これがインフレ抑制に十分な効果を挙げていないとの認識から、1991年2月にインフレ率を目標とする政策を導入したのである。このあたり、インフレではなくデフレではあったが、2013年1月の日銀のインフレ目標導入と似たような経緯があったようである。

インフレ目標については歴史があるカナダ銀行の総裁が今度はイングランド銀行の総裁となった。ただし、このカーニー氏はインフレ目標から進化させた、名目GDPターゲットを提唱していていたりする。カーニー氏は「私はカナダと英国で採用されているような弾力的なインフレターゲティングが、これまでのところ最も効果的な金融政策の枠組みだ」との発言もあったが、その後は柔軟化が行き過ぎれば信頼を損なう恐れがあるとの認識も示している。

カーニー氏はアベノミクスへの理解を示した一人である。しかし、日銀の異次元緩和に対して5月21日のカナダ中銀総裁としての最後の講演で、「中途半端な対応策の危険性という面では、欧州は日本から教訓を引き出すことができる」と述べ、自身が「大胆な政策上の実験」と呼ぶ日本の大規模金融緩和が成功するかどうかは今後数年の世界経済見通しに影響するだろうと述べたそうである。

イングランド銀行総裁がカーニー氏に代わって、イングランド銀行の金融政策に変化はあるのか。7月3日・4日にMPCが開催される。FRBのバーナンキ議長は量的緩和政策の出口について示唆しており、これが米国だけでなく英国の長期金利の上昇要因となった。このあたりの動きを含めてどのような対応をするのか。グローバルなリスクは後退しているが、景気については米国と英国では温度差もある。カーニー総裁は就任早々、なかなか難しい手綱さばきが求められそうである。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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