3月の債券市場における投資家の動き
4月22日に日本証券業協会は3月の公社債投資家別売買高を発表した。3月20日に日銀の黒田総裁、岩田副総裁、中曽副総裁が就任した。異次元緩和への期待も強まっていたなかで、投資家は果たして国債を主体に債券市場でどのような運用をしていたのか気になるところである。
短期国債を除くベース、つまり1年以上の残存期間の国債について、都銀は7921億円の買い越しとなっていた。地銀は4137億円の買い越し、信託銀行は3兆2110億円と3兆円を超える大幅買い越しとなっていた。農林系金融機関も3750億円の買い越しに。
生損保は1兆221億円の買い越し、投資信託も5347億円の買い越しとなっていたが、海外投資家は1191億円の売り越しとなっていた。
都銀は買い越しに転じ、信託の買い越し額もさらに大きくなっていたが、年限別の売買にはそれぞれ偏りも見えていた。
それを国債の投資家別売買高でみてみると、都銀は長期債を2兆7924億円も買い越していた半面、中期債を1兆8525億円売り越していた。超長期債は1562億円の売り越し。ちなみに都銀は2月も中期債を売り越して中期債を買い越し、ただし超長期は買い越していた。都銀による長期債の2兆7924億円の買い越しは、2004年4月以降のデータのなかでは最高の買い越し額となっていた。
信託銀行は前年限で買い越しとなっており、超長期債を1兆1181億円、長期債を7683億円、中期債1兆1663億円のそれぞれ買い越し。円安株高の進行に伴うパッシブ系の年金運用者などからのリバランスの買いが、中期ゾーンを含めて引き続き入っていたものと思われる。
農林系金融機関は超長期を2557億円買い越し。生保も超長期債を9265億円の買い越しに。
外国人は長期債を1兆4540億円売り越していた半面、中期債を1兆1724億円買い越していた。2月も金額はこれよりは少ないが、やはり外人は長期債売り、中期債買いをしていた。
短期債の売買高をみると、外国人がこの月も13兆8073億円の買い越しとなっており、外投資家による短期債の買い越しは継続していた。
3月の債券相場を振り返ってみると、日銀総裁候補の黒田東彦氏は4日の衆議院運営委員会の所信聴取で、デフレ脱却へ向け可能なことは何でもやると表明し、長期の国債も購入対象として検討すべきだと述べた。4日の債券先物はこの発言を受けて上昇し、145円32銭の高値引けとなり、12月11日につけた過去最高値を更新した。5日も債券に買いが入り10年債利回りは0.6%割れに。8日の30年国債入札は順調な結果となったが、一部の投資家が直接大量に応札した可能性があり、このため債券相場は一時大きく買われた。
12日の5年国債の入札は無難な結果となったが、20年国債の入札は低調な結果に。しかし、超長期債の売りも限定的であった。むしろ中期ゾーンの買いがいったん止まり、超長期債や長期債には投資家の買いが入った。このあたりで都銀が中期債から長期債に入れ替えていた可能性がある。
ユーロ圏財務相会合ではキプロスへの財政支援と引き換えに全ての銀行預金への課税を決めたことを受け、キプロス政府は16日に全銀行口座からの引き出しを制限する預金封鎖を開始した。この異例の措置に市場は動揺した。15日の米10年債利回りは2%割れとなっていたこともあり、18日の現物10年債利回りは再び0.6%割れに。20日に日銀の黒田東彦総裁、岩田規久男副総裁、中曽宏副総裁が就任したが、大胆な金融緩和の期待も強く、特に長期、超長期債に買いが入った。21日に債券先物は145円75銭まで上昇し、連日で債券先物の最高値を更新した。
このように3月の債券相場は、超長期債には信託銀行や生保、長期債には都銀や信託銀行からの買いが入っていた。中期債は信託銀行などからの買いは入るものの、都銀による売りにより上値が抑えられた格好となっていた。