内外で金価格が急落している。大阪取引所の金先物相場は6月2日の1グラム=6,742円をピークに、足元では6,200円台前半まで急落している。COMEX金先物相場も、6月上旬の1オンス=1,900ドル水準に対して、6月18日には一時1,761.20ドルまで急落した。米連邦準備制度理事会(FRB)がマーケットの想定よりも大胆かつ迅速な利上げ対応に踏み切り、金利上昇が進む一方で、インフレリスクが抑制される可能性が浮上しているためだ。

6月15~16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、米金融当局者の経済見通し「Summary of Economic Projections」において、2023年に0.5%の利上げ予想が中心意見になっていることが確認された。前回3月時点での調査でも23年中の利上げ予想は存在したが、中心意見としては21年に続いて22年、23年とゼロ金利政策が続くとの予想が支配的だった。それが僅か3か月で0.25%の利上げ2回を予想する状況に急変したことが、ドルの急伸、金の急落を促している。

21年の実質経済成長率見通しは3月時点の6.5%から7.0%に引き上げられ、コアPCEインフレも同2.2%から3.0%まで引き上げられている。22年や23年の経済見通しが大きく修正されている訳ではないが、新型コロナウイルスのワクチン接種が順調に進み、パンデミックによる経済の不確実性が後退する中、有事対応としての資産購入を停止する議論に留まらず、早期の利上げも可能と考え始めている当局者が増えていることが窺える。

実際に23年に利上げが可能、もしくは必要な状態になっているのかは、依然として不透明感が強い。足元では強力な財政出動が景気を過熱化しているが、今後はこうした政策支援が薄れることで、経済成長とインフレ圧力は鈍化する可能性がある。また、足元のインフレ警戒感は原油など素材市況が20年の急落から大きく切り返している影響が大きいが、22年、23年とその影響は徐々に縮小することになる。また、失業保険給付の上乗せ措置が終了すれば、労働市場に復帰する人も増え、インフレと関係性の深い賃金上昇にブレーキが掛かる可能性もある。実際に当局者の経済予想でも23年の実質経済成長率は2.4%(3月予想は2.2%)、コアPCEインフレは2.1%(同2.1%)となっており、経済の過熱化がメインのシナリオとして想定されている訳ではない。

パウエルFRB議長も、今議論しているのはテーパリング(資産購入の縮小)であって、利上げではないと、市場が金融政策正常化を先取りする動きに対してけん制する発言を行っている。債券市場をみても、2年債などの短期金利は急伸したが、10年債など長期金利の上昇は一時的な動きに留まっている。金相場は10年債の実質金利と強い逆相関を見せているが、FOMC前後で実質金利はマイナス幅を若干縮小した程度であり、劇的な変化が生じている訳ではない。

コロナ禍からの経済正常化が進み、金利上昇とインフレコントロールが同時に実現するのであれば、金は輝きの一部を失うことになる。高金利・低インフレ環境においては、安全資産としての金保有の魅力は失われるため、低金利やインフレ警戒から金市場に流入していた資金の流出が警戒される。

ただ、コロナ禍の克服、インフレコントロールをともに実現できるのかは、依然として長い道のりが想定される。金相場の急落に関しても、先物市場における短期投機筋の仕掛け的な売買の影響が大きいとみられ、長期投資家が多い金上場投資信託(ETF)市場では逆に値下がりを投資チャンスと捉えた資金流入も確認されている。コロナ禍とその弊害を簡単に克服できるのか、まだ疑問は残されていることが窺える。