トルコリラの過去最安値更新が続く フランスとの対立も警戒、1年で30%安

(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

トルコ通貨リラの下落が止まらない。10月26日のリラ/円相場は1リラ=13円台を割り込み、過去最安値を更新している。1年前の同じ時期には18円台後半で取引されていたため、1年で通貨価値が3割以上も下落した計算になる。

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地政学的緊張が、リラ相場の重しになっている。トルコのエルドアン大統領は10月23日、ロシア製の地対空ミサイル「S400」の試射を実施したことを正式に認めた。16日に複数のメディアが黒海沿岸の北部シノップで「S400」からミサイルが発射された可能性を報じており、米国務省のアルタガス報道官は「もし確認されれば、最も強い言葉で非難する」と警告を発していた。こうした中、試射の正式な確認が取れたことで米国や北太平洋条約機構(NATO)との対立激化は避けられない状況になっている。

トルコとしては、米大統領選で対トルコ強硬派のバイデン氏の優勢が報じられていることもあり、大統領選の前に「S400」の試射を正式に認めることで選挙後の対立激化を緩和する目的もあったのだろう。ただ、為替市場では欧米諸国とトルコとの関係が決定的に悪化するリスクが警戒されている。

また、フランスで中学校教師がイスラム過激思想の運動家に殺害された事件を受けて、マクロン仏大統領がイスラム過激思想との闘いを宣言したことに対して、エルドアン大統領がマクロン大統領は「精神的な治療が必要」と激しく批判したことも新たなリスクと捉えられている。

フランス政府は24日に駐トルコ大使を呼び戻し、「激怒と侮蔑は適切な手法ではない」とエルドアン大統領を批判している。一方、エルドアン大統領は26日、国民に対してフランス製品の不買を呼び掛けると同時に、欧州のリーダー達に向かってマクロン大統領の「アンチ・イスラム」政策をやめさせるべきだと呼び掛けている。

トルコとフランスはともに北太平洋条約機構(NATO)加盟国だが、最近は地中海の油田開発、シリアとリビアの内戦への介入、ナゴルノカラバフ紛争などを巡って対立が激化していた。現在はここに、宗教対立という新たなリスクが急速に拡大している状況にある。これはトルコとフランスの関係悪化に留まらず、トルコと欧州諸国、更には米国との亀裂を決定的にさせるきっかけになり得る動きと評価されている。

本来であれば、コロナ禍で疲弊した経済を立て直すため、トルコも欧米諸国との対立をあおるような政策を採用すべき局面ではない。観光業が壊滅的な被害を受ける中、外国からの投資を抑制するような政策は好ましくない。しかし、インフレや通貨安、高失業率といった厳しい経済環境からトルコ国民の目をそらせるために、エルドアン大統領が強硬な対外政策を採用しているのではないかとの警戒感が、マーケットに広がりを見せている。

リラ相場の急落は、マーケットがエルドアン大統領の対外政策に「ノー」の意思表示を行っていることを意味するが、このまま強硬姿勢が維持され続けると、リラ相場が更に急落するリスクが払拭できない状況が続くことになる。