米国とイランの対立激化で原油価格が急騰中

(写真:ロイター/アフロ)

国際原油価格が急伸している。指標となるNY原油先物価格は、1月3日のアジア時間に前日比で一時2.66ドル(4.3%)値上がりし、1バレル=63.84ドルに達している。サウジアラビアの石油施設が攻撃を受けたことで世界の原油供給の約5%が失われ、原油価格が跳ね上がった昨年9月の高値63.38ドルを上抜き、昨年5月20日以来の高値を更新している。

もともと原油価格は、米中通商環境の改善期待、世界的な株高傾向を背景に値上り傾向にあったが、ここにきて突然の急伸を促したのは中東地区における地政学リスクの高まりである。中東情勢の先読みが難しくなる中、原油供給環境の不確実性が高まっていることが、原油高に直結している。

直接のきっかけは、米国防総省が、ドナルド・トランプ米大統領がイラン革命防衛隊の精鋭部隊「コッズ部隊」のガセム・ソレイマニ司令官の殺害を命じ、現地時間3日未明に同司令官を殺害したと発表したことだ。

国内メディアでは大きく報じられていなかったが、昨年末にはイラク北部の米軍基地が攻撃されて複数の米国人が死傷し、米軍がイラクのイスラム教シーア派武装組織の複数の拠点を報復攻撃したことで、年末から年始にかけて米国とイランとの関係には緊張感が高まっていた。年末には、イラクの米大使館が抗議デモに包囲され、一部施設が破壊されていた。1月2日には、この抗議デモの収束が報じられていたことで、地政学リスクには一服感が広がり始めていたが、このタイミングでトランプ大統領が「防衛措置」(米国防総省)という名の先制攻撃に踏み切ったことで、地域の緊張感が一気に高まっている。

イランの最高指導者ハネメイ師は、喪に服した後の報復を宣言しており、米国とイランとの対立がエスカレートしていることが、本格的な軍事衝突に発展するのではないかとの警戒感を高めている。

米国は、既にイラン産原油取引の完全禁輸制裁を行っており、イラン産原油の供給量が直ちに激変する事態が想定される訳ではない。しかし、イランの周辺には原油輸送の重要拠点であるホルムズ海峡などが存在することで、地域の政情が不安定化すると、サウジアラビア、クウェート、イラク、UAEなど周辺国からの原油供給も大きな影響を受ける可能性がある。これは、原油輸入量の9割近くを中東産に依存する日本にとっても対岸の火事とは言えない。

1)このまま緊張状態を保ちながらも軍事衝突は回避される、2)地域と時間が限定された軍事衝突が発生する、3)長期にわたる軍事衝突が発生するなど、多くのシナリオが存在している。最終的には、トランプ米大統領がどのような決断を下すのかに依存するが、原油価格は最悪のシナリオに備えている。

トランプ米大統領は、自身のTwitterアカウントに星条旗を載せるだけで、何もコメントしていないことも、原油市場の不安ムードを高めている。Twitterの「トレンド」では、「world war 3」など、第三次世界大戦を意味する言葉(ワード)が流行を見せている。

マーケットでは、本格的な原油供給不安には発展せず、一時的な緊張状態に留まるとの見方が一般的だが、予想が外れた際のショックが極めて大きいだけに、原油価格は一瞬にして4%超の値上がり対応を迫られている。