東京金が5,000円台乗せ、ドル安志向を強めるトランプ政権

(写真:ロイター/アフロ)

東京商品取引所(TOCOM)では8月6日、金先物価格(2020年6月限、期先)が1グラム=5,006円まで上昇し、2013年4月以来となる5,000円台に乗せた。年初の4,537円から469円(10.3%)の値上がりになる。

直接的には、米中対立が激化していることで、リスク資産売り、安全資産買いの動きが広がりを見せている影響が大きい。トランプ米大統領は、通商協議が遅々として進まないことに不満を募らせ、3,000億ドル相当の中国製品に対して10%関税を課す方針を示した。更には中国を「為替操作国」に指定し、為替政策の透明化を高めるように促すとしている。一方、中国は、米国からの農産物輸入を一時停止するとして、対決姿勢を強めている。米農村部はトランプ政権の支持基盤であり、これから収穫期を迎える農産物を購入しないことで、足元から揺さぶりをかけることになる。

圧力こそが問題解決の切り札と考えるトランプ政権と、これ以上は圧力に屈することはできないとの決意を固めた中国の習政権が、互いに譲れないままに世界経済がリセッション(景気後退)に陥るチキンレースを演じているのではないかとの懸念が広がりを見せている。

■「為替操作国」指定の脅し

更に、「為替操作国」の指定問題は、リスクオフを促すだけの単純な効果に留まらないことになる。中国を「為替操作国」に指定したことは、トランプ政権が今後は通商問題に為替問題を絡めてくる可能性が高まったことを意味する。貿易戦争のショックを通貨安政策で緩和することは許さず、自国通貨に関してはドル安志向を強めるスタンスが一段と鮮明になろう。

また、トランプ大統領はかねてから貿易相手国が通貨安の恩恵を受けているにもかかわらず、米国では米連邦準備制度理事会(FRB)が十分な利下げ対応を行わず、貿易戦争中にもかかわらず(貿易相手国との比較で)高金利・ドル高環境にあることに対して強い不満を表明していた。7月30~31日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.25%の利下げが決定されても、利下げ幅が小さいとして不満を表明していた。為替政策にも踏み込むのであれば、貿易相手国の通貨安批判と同時に、FRBに対して緩和的な政策要求圧力が更に強化される可能性が高い。

さすがに、対人民元やユーロ、円などに対して直接的にドル売りを仕掛けてくるような実弾介入が行われる可能性は低い。ただ、「為替操作国」の指定カードを背景に中国、更には5月で公表された米財務省「為替報告書」で監視リストに指定された日本、韓国、ドイツ、イタリアなどに通貨安は許容しないとのけん制を行うと同時に、米国内ではFRBに対して更に積極的に利下げ対応を行うように圧力を強化すれば、ドルの上値は圧迫されやすくなる。

国際基軸通貨ドル相場と金価格との間には強力な逆相関関係が認められており、トランプ政権がドル安政策を本格的に採用し始め、それにドル相場が反応して下落すれば、金価格は更に輝きを増すことになる。円高環境で本来であればTOCOMの円建て金価格は下落し易い環境にある。しかし、それにもかかわらず5,000円台という大台に乗せていることは、現在の金は、円高のデメリットを上回る投資対象としての魅力を有していることを意味している。