個人投資家に人気のトルコ通貨リラが急落

(写真:アフロ)

高金利通貨として日本の個人投資家に人気があるトルコ通貨リラ相場が急落している。リラ/円相場は年初の1リラ=29.7151円に対して5月23日安値は22.2795円に達しており、年初から既に25.0%の急落になっている。

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直接的なきっかけは、米長期金利が急伸していることだ。原油高や良好な実体経済環境を背景に米国のインフレ環境が改善しており、米国の利上げサイクルが加速する可能性が指摘されている。従来は年3回の利上げが可能か否かといった議論だったが、今や年4回の利上げ予想も勢いを増している。この結果、年初は2.4%台に留まっていた米10年債利回りは、5月には一時3.1%台に乗せており、新興国から米国に対する資金シフトの動きが報告されている。

そして、ここにきてトルコ独自の売り材料として注目度が高まっているのが、中央銀行の通貨価値の防衛能力が疑問視されていることだ。4月のトルコ消費者物価指数は前年比10.85%上昇に達しており、リラの購買力は急速に失われている。この状況で米国の金利水準が急激に切り上がっていることが、トルコからの資本流出を加速させている。実際に、トルコでは通貨のみならず株式、債券なども売られるトリプル安が発生している。

一般的に通貨価値を防衛するには、金融政策を引き締める利上げを行うのが最短距離になる。米国以上に金利面での魅力を高めていけば、リラ売りの動きにブレーキが掛かる可能性がある。しかし、トルコではエルドアン大統領が利上げに強く反発しており、独立性が疑問視されている中央銀行は通貨防衛に十分な政策対応を行えない状況に陥っている。

象徴的だったのが、5月14日にトルコ政府代表団が機関投資家を対象に行った経済政策の説明会だった。海外投資家にトルコへの投資に安心感を持ってもらうための説明会だったが、エルドアン大統領は金利引き下げで、物価上昇と通貨安に歯止めを掛ける計画を明らかにしたのだ。これは同大統領が従来から主張していた政策だが、マーケットは金利引き下げがなぜ物価上昇と通貨安に歯止めを掛けることになるのか、エルドアン大統領独自の経済理論を理解できずに不信感を募らせている。

5月9日にはリラ安を巡る対応で緊急協議が開催されたが、そこでもマーケットが求める金利引き上げに前向きな動きは見られなかった。11日にはエルドアン大統領が改めて金利が「全ての悪の根源」と断言し、6月の大統領選・議会選後に金利の「呪い」と闘うとして、金利引き下げを行う方針を確認している。更に15日には、大統領は金融政策に「影響力を持つべき」として、将来的に中央銀行に対して金利引き下げを迫る可能性を強く示唆している。16日には中央銀行が「必要な措置を取る見込み」と公表したことで漸く利上げが実施されるとの見方が広がったが、その後も通貨防衛のための施策は打ち出されていない。

格付け会社はこの状況に警告を発し、フィッチは金融政策の独立性に懸念を表明している。また、S&Pは、通貨安圧力に当局が歯止めを掛けられない状況に懸念を表明している。こうした動きは今後の格下げを警告したとも言えるが、それでも中央銀行が動きを見せないことが、早期の政策対応を求める一種の催促相場としてのトリプル安を促している。

しかも、23日の東京時間早朝にリラ/円相場が26円台中盤から25円台中盤まで急落したことで、これまで高金利に魅力を感じてリラを買い続けてきた個人投資家が、相次ぐリラ安を受けてポジションの強制決済を迫られた可能性が指摘されている。

国内の低金利環境下において、高金利通貨は人気を博しており、実際に通貨価値が維持されている間は、実際に大きなリターンが期待できる。しかし、高金利通貨には金利が高くなければ資本流入を維持できない問題を抱えているものが多く、ここにきて新興国通貨の中でも特に多くの問題を抱えたリラ相場が急落対応を迫られている。高金利通貨の持つリスクの高さが顕在化した局面になっている。

トルコ中央銀行が市場の警告を素直に受け止めて通貨防衛に舵を切れば、リラ安にはブレーキが掛かる可能性も浮上する。しかし、トルコは中東の地政学リスクも抱えており、リラに資金回帰を促すために必要な政策レベルは高まる一方の状況にある。トルコ中央銀行がエルドアン大統領の圧力を排して、必要な通貨貿易策を打ち出せるかが注目されている。