株を買って金も買う ~金価格が10連騰~

(写真:ロイター/アフロ)

1月4日のCOMEX金先物相場は、年末・年始を挟んで10営業日続伸となった。昨年12月12日の1オンス=1,238.30ドルをボトムに直近高値は1,327.30ドルに達しており、昨年9月15日以来となる約3ヵ月半ぶりの高値を更新している。為替市場でドルが軟化していることに加えて、イランや北朝鮮など地政学リスクの高まりを材料視した買いが続き、明確な上昇トレンドが形成されている。

世界の株価は年初から急伸しており、本来であれば「安全資産」である金相場を積極的に買い進むような投資環境にはない。米株式市場ではダウ工業平均株価が2営業日連続で過去最高値を更新しており、通常であれば金市場からは投機資金が流出し易い相場環境にあると言える。投資家のリスク選好性が高まる局面にあって、金相場が上昇しているのは通常の状態とは言えない。

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■米経済の強気見通しでも下落するドル

こうした異常とも言える値動きの背景にあるのは、一つがドル安である。本来であれば米国株が過去最高値を更新し、米実体経済の指標も好調さを示すものが相次ぐ中、為替市場ではドル高圧力が発生し易い状況にある。しかし実際には、米国株高にもかかわらず米長期金利が一向に上昇しないことに加えて、米国以上にユーロ圏の良好な経済環境がクローズアップされる中、ドルは対ユーロを中心に下げに転じている。「米国の良好な投資環境→ドル高→ドル建て金相場下落」ではなく、「ユーロ圏の良好な投資環境→ユーロ高(ドル安)→ドル建て金相場上昇」の流れが確立している。

これと同様の相場環境は昨年中旬にも観測されていたが、ユーロ圏経済が欧州債務危機、更にはイギリスの欧州連合(EU)離脱を経て成長を加速させていることが、ドル建て金相場を大きく押し上げている。国際基軸通貨ドルと代替通貨たる金は逆相関の関係にあり、投資家のリスク選好性の高まりがドル高圧力に直結しないことが、ドル建て金相場を押し上げている。

■根強い地政学リスクへの警戒感

もう一つの背景が地政学リスクの高まりである。年末・年始を挟んでイランでは反政府デモが広がりを見せており、今後の展開次第ではイラン国内の混乱状況に留まらず、米国やイスラエル、サウジアラビアなども巻き込んだ国際政治環境の不安定化を招く可能性がある。更に北朝鮮では、新たなミサイル発射が準備中との報道があり、改めて朝鮮半島有事のリスクが高まるシナリオも警戒されている。

株式市場はこうした地政学リスクに大きな関心を示していないが、今後の展開によっては実体経済の動向と関係なく投資家のリスク選好性が後退し、株価が急落するリスクを抱えている。こうした中、株式市場における強気スタンスを後退させるのではなく、株式市場における強気スタンスを維持して株高の恩恵を享受すると同時に、安全資産の金を購入して「万が一」に備える動きが金相場の10営業日続伸を促す重要な要素の一つになっている。

「株を買って、金も買う」と言う投資行動は必ずしも一般的とは言えないが、昨年の株価急騰局面でも金相場は底固く推移しており、株高環境にあっても投資家が漠然とした不安心理を抱えていることが明確に示されている。昨年の場合だと、実際に株価急落が実現して保険としての金が活躍する場面は乏しかったが、株高の恩恵を享受することを基本方針としつつも、保険の金を購入する投資行動は今年も維持されている。

「株式で攻め、金で防衛する」のが、トランプ米大統領誕生後の大きな投資トレンドになっている。