NY原油価格が50ドル台回復、過剰供給解消の流れを反映

(写真:ロイター/アフロ)

国際原油価格の水準が切り上がっている。NYMEX原油先物相場は、1~2月の1バレル=50~55ドル水準をピークに3月以降は50ドル割れ定着が進んでおり、6月21日には今年最安値となる42.05ドルを付けていた。しかし、その後は幾度かの調整安をこなしながらも上昇トレンドを形成し、9月20日の取引ではついに終値ベースでも50ドルの大台を回復することに成功している。依然として5月25日の価格水準に戻した状態に過ぎないが、昨年2月に付けた26.05ドルを試す可能性さえも指摘されていた年央と比較すると、原油相場を取り巻く環境は明らかに改善していることが窺える状況にある。

最大の要因は国際原油需給のリバランス(re-balance)が実現することに対する信頼感が回復傾向にあることだ。

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■在庫環境の正常化は疑問視されていたが…

2014年後半以降の国際原油市場においては、シェールオイルの大規模増産などで発生した供給過剰状態を解消して、需要と供給とのバランスを取り戻す(=リバランス)ことが目指されていた。2017年1月以降は石油輸出国機構(OPEC)やロシアが協調減産に踏み切り、需給のリバランス、更には積み上がった過剰在庫の正常化を目指すトレンドが形成されていた。協調減産の規模はOPEC加盟国と非加盟国を合計して、世界石油供給量の1.8%に相当する日量173万バレルに達しており、政策的な減産によって意図的に供給不足状態を作り出し、在庫環境を正常化することが目指されていた。

問題は、その過程において原油価格水準が切り上がる中、2014年後半以降の原油安で減産対応を迫られていたシェールオイルが息を吹き返したことだった。2016年中盤の米産油量は前年比で日量100万バレルを超える減産状態にあったが、10月前後から産油量が上振れし始め、17年2~3月にかけては前年比でも増産状態に転じたのだ。このため、協調減産で供給を削減しても、シェールオイルの増産によって相殺され、需給リバランスは失敗に終わるのではないかとの警戒感が広がっていた。

OPECやロシアなどは、需給リバランスの目安として世界の商業在庫を5年平均の水準まで戻す(=削減する)目標を掲げていたが、1~3月期は協調減産を実施しているにもかかわらず在庫は増加し、1)減産量の更なる積み増し、もしくは2)原油安によるシェールオイルの減産が必要との見方が、3~6月にかけて原油相場の急落を促したのである。

■需要見通し引き上げのインパクト大

しかし、その間もOPECやロシアなどは着実に協調減産を継続し、4~6月期には漸く世界の在庫が減少に転じ始めた。5年平均への回帰が実現するのかは疑問視する向きも多かったが、取り敢えずは在庫トレンドが「増加」から「減少」に転じ始めたことには大きなインパクトがあった。それでも、マーケットではOPECの減産合意の遵守率が100%から遠ざかり始めたことを警戒して、やはり協調減産による需給リバランスは失敗に終わるとの警戒感も根強かった。しかも、(生産トラブルに見舞われていたために)協調減産合意の枠外にあったOPEC加盟国のリビアやナイジェリアの産油量が回復したこともあり、OPEC全体としては寧ろ産油量が増加傾向に転じ始めていたことが、本当に在庫減少傾向が続くのか慎重な見方を促していた。

しかし、4~6月期以降は世界の需要見通しが急速に引き上げられる一方、産油国サイドが減産合意遵守率への働き掛けを強化し、更には協調減産の期限を今年末から来年3月末まで延長したことが、原油需給リバランスに対するマーケットの信頼回復を促した。特に需要見通し引き上げのインパクトは大きく、これによって産油国が無理な協調減産を実施しなくても需給リバランスは達成できるとの見方が、原油価格が50ドル台を回復すル直接的なきっかけになった。

例えば、国際エネルギー機関(IEA)は2017年の世界石油需要について、1月時点では前年比で日量130万バレルの増加を想定していた。しかし、直近の9月時点では160万バレル増と記録的な高水準まで需要見通しを引き上げている。日量30万バレルの違いは一見すると小さいが、1年間だと1億0,950万バレルもの需給引き締め圧力になり、需給インパクトは極めて大きい。

経済協力開発機構(OECD)加盟国の商業石油在庫は7月時点で30憶1,600万バレルとなっているが、これは需給リバランスの目標とされる5年平均を1億9,000万バレル上回っている。まだ明らかに過剰な在庫が蓄えられているが、年後半は北半球が需要期を迎えることになり、5年平均回帰の実現有無については議論があるものの、余剰在庫が一掃に近い状態にまで需給リバランスが進展するとの期待感が高まっている。

しかも、OPEC内では早くも減産延長議論が活発化しており、あくまでも今回の協調減産によって需給リバランスを実現する強い意向が示されている。実際に減産延長が実現するのかは11月のOPEC総会まで協議が続くことになるが、1)産油国が協調減産による需給リバランスを目指す方針に変化がなく、2)協調減産の合意が遵守され、3)実際に在庫減少圧力が観測されていることが、原油価格の50ドル台回復を促している。

■シェールオイル生産鈍化の影響も

また、6月以降はシェールオイルの生産活動が鈍化していることも、原油価格の上昇に寄与している。先行指標となる米石油リグ稼働数をみてみると、7月以降は前週比で増減を繰り返しているが、直近の9月15日時点では6月16日以来となる約3カ月ぶりの低水準に落ち込んでいる。

6月の原油相場急落のショックが大きかったことに加えて、先物市場で2017年や18年渡しの原油先物価格が辛うじて50ドルを上回る水準に留まる中、採算性の観点からシェールオイル増産の動きにブレーキが掛かっている。さすがに2015~16年にかけてみられたような大規模な減産対応が求められる状況にはないが、シェールオイルの増産圧力が抑制されていることも、原油価格の水準切り上げを正当化している。

シェールオイルは開発から生産までのサイクルが極めて短い関係で、原油価格の本格的な上昇が許容される状況にないことには変化が見られない。例えば、2018年時点の原油先物価格が55ドルや60ドルと言った水準まで上昇すれば、3か月前後でシェールオイルの増産プレッシャーが加速し、需給リバランス実現に対して懐疑的な見方が蒸し返されよう。

ただ50ドル台といった価格水準であれば、OPECなど伝統的産油国とシェールオイルが共存できる均衡ラインとして、中長期的に維持できる可能性が高まっている。