ロシアとサウジに振り回された原油市場

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

9月26~28日に石油輸出国機構(OPEC)非公式会合が予定される中、国際原油市場ではOPECが原油価格押し上げへの働き掛けを再開するかが注目されている。しかし、中国・杭州で開催された20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせて実施されたサウジアラビアとロシアのエネルギー相会合などの結果を見る限り、その実現可能性は低いことが再確認できる状況になっている。

日本時間9月5日の夕方に、各種メディアがサウジとロシアが原油市場に関する共同声明を発表するとの関係筋の発言を報じたことで、原油市場では緊張が走った。二大産油国が敢えて共同声明発表の形をとる以上は、原油需給・価格見通しに何か大きな修正を迫るような動きではないかとの警戒感が広がった結果である。国際指標となるNYMEX原油先物相場は、9月2日終値が1バレル=44.44ドルだったのに対して、一時46.53ドル(前日比2.09ドル)まで4.7%もの急伸相場になっている。

画像

(画像出所:CME、WTI原油先物価格15分足)

このタイミングで重要な発表を行うとすれば、OPEC非公式会合での政策対応を巡るテーマの可能性が高く、サプライズがあるとすれば「サウジとロシアの協調減産への支持表明」と考えられたためだ。仮に、ここでサウジとロシアの協調減産支持が確定すれば、他産油国も同調して、これまで市場原理に任せる形で急落、その後の反発局面を迎えていた原油市場に、新たな価格形成の論理が持ち込まれることになる。

しかし実際には、サウジとロシアはOPECとしての政策調整に否定的な立場にあることが確認される結果に終わっており、その後の原油相場は45ドル水準まで急反落している。

共同声明では、原油市場の安定化に両国が協力する方針を確認するに留まり、現段階では具体的な行動は何も検討していないことが明らかにされている。将来的な産油量制限の可能性については指摘されているが、ただ単純にサウジとロシアの協力関係を確認する内容に過ぎず、マーケットは「共同声明に対する警戒は杞憂だった」との評価に一気に傾いている。

今回の共同声明は、サウジのサルマン副皇太子とロシアのプーチン大統領の会談後に、サウジのファリハ・エネルギー相とロシアのノバク・エネルギー相の会談を経て署名されており、エネルギー分野に限らずサウジとロシアが協力関係を深める最近の国際政治スキームの一環の動きになっている。戦略的パートナーシップの構築が合意されているに過ぎない。

ただ原油市場に限定すれば、サウジのファリハ・エネルギー相は「現時点で、(産油量)凍結は必要ない」としており、3週間後のOPEC非公式会合での産油量凍結を巡る議論には事実上の反対姿勢を示した格好になっている。また、ロシアのプーチン大統領はイランが経済制裁前の産油水準を回復しようとする動きに理解を示しており、同国の増産対応を積極的ではないにしても支持する方針を明らかにしている。

なお原油相場は2014年前半までの100ドル水準と比較すると半値水準に留まっているが、これまでの油価急落に伴うシェールオイルなどタイトオイル分野の生産調整、更には低価格や世界経済の拡大に伴う需要拡大で、需給均衡状態を実現できるとの強い自信がある模様だ。

当然に再び原油価格が急落すれば、サウジやロシアも違った対応が求められる可能性もあるが、現時点では市場原理に委ねておけば緩やかな油価回復が可能と認識していることが窺える。ロシアのプーチン大統領は、現在の原油価格について適正ではないとの見方を示すも、満足はできるとして政策対応を急ぐ必要性は否定している。