もしトランプが米大統領になったら、投資家の恐怖を表す金価格

(写真:ロイター/アフロ)

内外で金価格が急伸している。ニューヨークのドル建て金価格は、昨年末の1オンス=1,060.20に対して、3月には1,250~1,300ドル水準まで値位置を切り上げ、昨年1月以来となる約1年2か月ぶりの高値を更新している。

年初からの金価格の急伸に関しては、国際金融市場がパニック化したことで、単純に投資リスクの高まりを嫌った投資家が、安全資産である金市場に資金を退避させた結果とみられていた。金融市場の動揺が続けば実体経済にも下押し圧力が強まる可能性が高く、昨年12月に利上げに踏み切ったばかりの米連邦準備制度理事会(FRB)の追加利上げが困難になり、もはや年内の追加利上げは不可能との見方も広がったことも、ドルから金に対する資金シフトを促した。

しかし、足元では既に国際金融市場は落ち着きを取り戻しつつあり、世界の主要株価指数は年初の価格水準を回復しつつある。米国においても、2月雇用統計が強めの数値になったことに象徴されるように、米実体経済の底堅さが再確認されている。これに連動する形で米10年債利回りは2月11日の1.6%台で底を打ち、足元では2%の大台回復を打診する動きを見せている。こうした投資環境の安定化にもかかわらず、なぜか金市場のみが投資家のリスクテイクの波から取り残された状態になっている。なぜだろうか?

米国のウォールストリート(金融街)では、ドナルド・トランプ大統領誕生への恐怖説が、指摘されている。主要な予備選が行われた3月1日の「スーパーチューズデー」では、共和党のトランプ氏と民主党のクリントン氏が共に7州で勝利し、7月の各党全国大会での候補者指名獲得に大きく前進している。15日には大票田の予備選が行われる「ミニ・スーパーチューズデー」を迎えるが、ここでも他候補がトランプ氏に迫ることができないと、「トランプ革命」が本物になる可能性がある。

トランプ氏の政治・経済政策に関しては過激な言動が繰り返されるばかりで良く理解できない部分も多いが、少なくとも投資家はトランプ大統領誕生の可能性に強い警戒感を示しており、ウォールストリートは好ましからざる人物との評価を下している。トランプ大統領誕生の可能性に恐怖した投資家が買っているのが究極の安全資産である金(Gold)であり、それが全ての投資商品の中で金価格のパフォーマンスを最高クラスにまで押し上げている可能性がある。

だとすると、トランプ大統領の誕生はないと投資家が判断を下すまで、金価格は株高・ドル高・金利上昇といった逆風に逆行して上昇を続ける可能性があるのかもしれない。安全資産である金が本当に必要とされる時代がくるのか、米大統領選挙の行方がその鍵を握り始めている。

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