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原油価格がクラッシュ、12年ぶりの安値更新

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

原油相場の急落が続いている。国際指標となるWTI原油先物相場は、1月6日の取引で1バレル=32.10ドルを記録し、2004年1月以来の安値を更新した。08~09年のリーマン・ショック後の最安値ですら33.55ドル(09年2月)であり、僅か2年前には100ドルの大台水準を維持していた原油相場が完全なクラッシュ状態に陥っている。

底流にあるのは、国際原油需給の緩和状態が長期化していることだ。価格カルテルである石油輸出国機構(OPEC)が供給管理の役割を放棄する中、「中国など新興国の成長鈍化による需要見通しの悪化」と「シェールオイルなど非在来型原油の増産」という、需要・供給の双方から働く需給緩和圧力に対処できなくなった結果である。

ただ、こうした原油需給環境は多くの市場関係者に周知されており、これだけで年明け後の原油相場急落を正当化することは難しい。やはり、中国経済に対するマーケットの不安心理を反映した値動きとみるべきだろう。中国に関しては、2010年比で2020年までに1人当たりの所得を倍増させる国家方針が採用されており、周近平政権も大規模な金融緩和や積極的な財政出動によって、そのために最低限必要とされる年6.5%の成長率を維持する構えを見せている。

しかし、現実の中国経済はこうした政策支援にもかかわらず、どこに「新常態(ニューノーマル)」と言われる安定成長の水準があるのか分からない景気減速状態に陥っており、中国実体経済がマーケットの想定市場に悪いのではないかとの懸念が高まっている。年初からの中国株の急落は、中国経済の悪化を伝える「炭鉱のカナリア」ではないかとの指摘が、市場関係者の間からは聞かれる。

加えて、本来は原油価格を押し上げるはずの地政学的リスクさえも、投資家のリスク許容度を低下させている結果、株式や他コモディティ市場と同様に原油市場からも投機マネーの流出が促されている。サウジとイランの緊張関係については、OPECの協調減産が難しくなったとのネガティブな見方もあり、原油価格反転のきっかけが見つからない状況になっている。

既にシェールオイルなど高コストの非在来型原油では減産圧力が観測されているが、需給均衡化のためにはより強力な減産圧力が必要との見方が、原油価格の下げをエスカレートさせている。このような原油価格のクラッシュ状態は、石油産業に対する投資縮小で将来的な原油価格急騰の火種になり得るが、原油相場の下げ止まりを促すためにも、まずは原油価格と原油供給環境の崩壊が求められているのかもしれない。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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