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NY原油16日:反発、地政学的リスクの高まりを警戒

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

NYMEX原油12月限 前日比1.00ドル高

始値 40.92ドル

高値 42.25ドル

安値 40.06ドル

終値 41.74ドル

地政学的リスクの高まりを背景に安値是正の動きが強まり、反発した。

週末にフランスで同時テロ事件が発生した。景気や航空輸送需要の減退リスクは原油価格に対してネガティブだが、フランス軍が「イスラム国」の拠点に対して過去最大規模の空爆を実施したことで、地政学的リスクの観点ではポジティブな影響も生じている。この結果、週明けの取引ではやや買い優勢の展開になるも、ニューうヨークタイム入り後に急反落、引けにかけては急反発など、方向性が定まらない展開になった。ただ、安値は40.06ドルと40.00ドルの節目を防衛したことで、主にチャート要因から押し目買いやショートカバー(買い戻し)が優勢になり、41ドル台後半まで上昇して引けている。

前週は国際エネルギー機関(IEA)が改めて過剰供給、それに伴う在庫の積み増しが原油相場を圧迫するリスクを指摘したこともあり、下値切り下げ傾向は維持されている。年初来安値37.75ドル(8月24日)も近づいており、今週中に安値更新局面に突入する可能性も否定できない。ただ、40ドル割れに対しては下げ過ぎとの見方も強く、底入れを打診する動きが見受けられる。

需給バランスはなお緩和状態にあり、原油相場が大きく上昇する必要性が乏しいことに変化は見られない。為替がドル高傾向を維持する中、特にドル建て原油価格は下押しされ易い状況は維持されよう。ただ、現行の価格水準であれば更に相場水準を大きく切り下げなくても生産調整の動きは強く、下落余地は限定される見通し。引き続き35~60ドルという比較的大きめのレンジ内での上下動を想定しており、ここから更に大きく突っ込む場面がみられれば、自立反発狙いの買いに転換しても問題はないとみている。30ドル割れを打診していくには、暖冬や急激なドル高、需要見通しの悪化といった新たなネガティブ材料が要求されよう。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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