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NY金28日:FOMC後に20ドル幅の急落、利上げ警戒再燃

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

COMEX金12月限 前日比10.30ドル高

始値 1,166.70ドル

高値 1,183.10ドル

安値 1,165.30ドル

終値 1,176.10ドル

引け後に米連邦公開市場委員会(FOMC)声明文の発表を控える中、ポジション調整の買い戻しが優勢になった。

FOMCでは特にハト派の声明文が想定されていた訳ではないが、ここ最近はドル高連動で相場を下押しする動きが強くなっていたこともあり、本日はイベント前のポジション調整が売りポジション整理の動きに直結した。アジアタイムは1,160ドル台後半で底固く推移していたが、欧米タイムに入ると上昇ペースを加速させている。引け際にはやや調整売りが膨らんだが、二桁の上昇で引けている。もっとも、FOMC声明の発表後はドルが急伸した動きと連動して、金相場は急反落している。1,155ドル水準で下げ一服となるも、概ね20ドル幅の急落となるなど、FOMCは金価格にネガティブと評価されている。

FOMC声明であるが、注目されたのは、「次回会合で目標レンジ引き上げが適切になるかどうかを判断する上では、最大限の雇用確保と2%のインフレ率に向けた進展を、現状と予測の両面から精査」との文言である。年内利上げの是非について具体的な議論には踏み込まなかったが、次回の12月会合では利上げの是非を巡る議論が本格化することが予告されたことで、改めて年内利上げの可能性も完全には排除できないとの警戒ムードが広がっている。

景況判断については、「経済活動は緩やかなペースでの活動が続いていることが示唆された」、「雇用の増加ペースは減速、失業率は横ばい」といったネガティブな内容も見られたが、米経済全体のトレンドとしては利上げ着手が検討でき得る状況にあるとの認識が強くなっている模様であり、改めて利上げ警戒ムードが強くなっている。

実際に12月利上げが可能かは残り2回の雇用統計の数値を見極める必要性がある。ただ、今回の声明文の内容を見る限りは、11月4日のイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)の議会証言が大きくハト派に傾くリスクは限定され、なお利上げ着手警戒が必要との見方が、10月のドル相場下落、金相場上昇の動きを是正している。

これによって、少なくとも金価格が再び急騰するリスクは著しく限定されることになる。12月利上げ着手のハードルは決して低くはないが、いつ利上げ着手が行われても違和感がない金融政策環境にあることは、ドルの下落余地、金の上昇余地を限定しよう。FRBは明確な利上げ着手時期のシグナルを発することを見送っているが、いずれにしても米金融政策が正常化プロセスの過程にあることが確認される中、金相場の戻り売り基調は維持される見通し。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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