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NY金19日:続落、中国GDPを受けて安全資産に売り

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

COMEX金12月限 前日比10.30ドル安

始値 1,176.90ドル

高値 1,178.20ドル

安値 1,169.00ドル

終値 1,172.80ドル

米利上げ警戒感を蒸し返す動きが見られる中、続落した。

中国の7~9月期国内総生産(GDP)が市場予測を上回ったことが好感され、米国の利上げ警戒感が蒸し返されている。7~9月期の中国成長率は+6.9%となっており、1~3月期と4~6月期の+7.0%からは下振れしている。ただ、マーケットではより厳しい数値を想定していた向きが多かっただけに、中国リスクに対する警戒感が後退したことが、安全資産である金価格に対してネガティブな影響を及ぼしている。ニューヨークタイム入り後は安値是正の動きも見られたが、引けにかけては改めて戻りを売られる展開になり、概ね本日の安値圏で引けている。

なお米金融政策環境については予断を許さない状況にある。サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は、利上げ派と利上げ見送り派の双方に強い論拠が存在するため、年内に利上げが実施される可能性は五分五分との評価を下している。総裁自身は、米経済の下期成長率が2%を超えるなど強気の見方を維持していることが明らかにされているが、米連邦準備制度理事会(FRB)全体としては、年内に利上げに踏み切っても先送りしても、不思議ではない状況になっていることが示唆されている。

年内利上げを支持する発言を行っているニューヨーク連銀のダドリー総裁も、イタリア紙の報道では年内利上げは時期尚早と発言したと報じられており、一方的な金融政策見通しを織り込むのが困難な状況になっている。本日は中国指標を受けて戻り売り優勢の展開になったが、引き続き米指標や金融当局者発言に一喜一憂する不安定な地合を想定しておきたい。

為替市場でドル安圧力が一服し、CRB商品指数が下値切り下げ傾向を強める中、金価格の上昇エネルギーは間違いなく縮小している。このままドル反落の一服が確認できれば、少なくとも大きく値位置を切り上げる必要性は薄れることになる。ただ、改めて大きく売り込んでいくには米金融政策の正常化プロセスに対する信認を高めていくことが要求されることになる。基調としては、利上げ先送り論の浮上に伴う一時的な戻り局面に過ぎないが、定期・上場投資信託(ETF)市場の双方で投機買いが膨らんでいるだけに、ダウントレンド再開には利上げ着手に向けてより高いレベルの警戒感が要求される。足元のドル安一服を再びドル高トレンドに発展させていくことができるかに注目したい。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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