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NY金12日:人民元切り下げのショック続き、続伸

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

COMEX金8月限 前日比15.80ドル高

始値 1,108.00ドル

高値 1,125.30ドル

安値 1,101.00ドル

終値 1,123.30ドル

前日に続いて中国人民銀行が人民元相場の切り下げに踏み切る中、グローバルマーケットの不安定化を背景に金相場は底固く推移している。

中国が人民元相場の安値誘導を開始した可能性が高まる中、他の新興国もこうした動きに追随し、改めて通貨安競争が激化するリスクが警戒されている。新興国通貨に対する下落圧力が強まる中、米連邦準備制度理事会(FRB)が本当に利上げに着手できるのか不透明感も強く、ドル安連動で金相場は地合を引き締めている。加えて、新興国通貨安はこうした地域からの資金引き揚げの動きを加速させており、新たな金融不安をもたらす可能性もある。現時点で何か具体的な危機が浮上している訳ではないが、漠然とした不安心理がリスク資産からの資金引き揚げを促していることが、金価格をサポートしている。

今後の焦点は、人民元切り上げを基点に国際金融市場、更には世界経済の不安定化が実現するか否かの一点に尽きる。現実問題としては、新興国市場の不安定化だけであればFRBは着実に利上げに踏み切る可能性が高く、金相場に対する戻り圧力は一時的なものに留まる可能性が高い。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)までにグローバルマーケットが落ち着きを取り戻していれば、9月利上げの可能性も十分にある。FRBの政策判断に際しては、必ずしも新興国市場の動向は重視されておらず、決め手になるのは米経済への影響の有無に限定されるためだ。

ただ、仮にこうした動きが米国の実体経済にまで波及する事態になれば、FOMC内で利上げ先送り議論が再浮上することも間違いなく、まずは人民元切り下げショックの影響を見極めたいとの見方が、金相場のリバウンドを促している。もともと、7月下旬の急落相場に対する加熱感が警戒される中、久しぶりのポジティブ材料が安値是正を促しているのが現状である。

基本的には、FRBの利上げを阻害するような動きには発展せず、一時的な戻り圧力に留まる可能性が高いと考えている。概ね中期トレンドラインに回帰しており、ここから更に大きく値位置を切り上げる必要性は乏しい。ただ、改めて下値を試すには国際金融市場の安定化、それに伴うドル高回帰が必要不可欠であり、人民元切り下げのショック吸収が着実に消化されていくのかを見極める必要性が高い。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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