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NY原油14日:反発、イラン核合意で一時急落も

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト
(写真:アフロ)

NYMEX原油8月限 前日比0.84ドル高

始値 52.00ドル

高値 53.33ドル

安値 50.88ドル

終値 53.04ドル

イラン核協議が合意に至ったことで急落する場面もみられたが、短期的な材料出尽くし感から反発した。

イランと欧米6カ国との協議は6月30日の交渉期限を二度にわたって延長してきたが、漸く最終合意に至っている。イランのウラン濃縮能力を制限することで、主に核武装への道を閉ざすことになる。一方で経済制裁解除の動きが本格化することになり、イラン産原油の市場復帰に対する警戒感が、原油相場を一時50.88ドルまで押し下げた。イランは半年で日量100万バレル程度の増産が可能との見方を示しており、イラン産原油の市場復帰で緩んだ需給が更に緩和傾向を強めるとの警戒感が原油相場の上値を圧迫している。

もっとも、仮に経済制裁が解除されたとしても直ちにイラン産原油が市場に供給される訳ではなく、これを手掛かりに本格的に下値切り下げを打診するのは時期尚早との見方も強い。米議会がイランに対する経済制裁解除に合意するのかも不透明感が残り、逆に短期的な売り材料出尽くしが意識された模様。

ただ、こうした動きはあくまでも自律反発に留まる見通しであり、原油相場の上値が重い状態に変化は生じないだろう。仮にイランの増産に時間が必要としても、これまでの経済制裁下で蓄えられた海上在庫などの放出は可能であり、多くみると3,000万~4,000万バレル、少なく見ても2,000万バレル前後は欧州やアジア製油所向けの出荷が可能と推計されている。

国際原油需給が強力な緩和圧力に晒された状態は長期化する見通しであり、素直に戻り売り優勢の展開を想定しておくべきだろう。ただ、本格的な値崩れを起こすにはドル高が必要不可欠であり、ギリシャ救済合意後のドル高圧力を維持できるかが、短期の50ドル割れの有無を決定付けることになる。改めて米利上げ観測を織り込んでいくことができれば、原油相場は強力な逆風に晒されよう。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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