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NY原油23日:イエメン情勢の混乱を受けて、反発

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油5月限 前日比1.58ドル高

始値 56.28ドル

高値 58.41ドル

安値 55.76ドル

終値 57.74ドル

地政学的リスクの高まりを受けて、期近主導で反発した。

前日は米原油在庫の増加を手掛かりに売り優勢の展開になったが、本日はイエメン情勢の緊迫化を手掛かりに買い優勢の展開になっている。サウジアラビアなどの有志連合は21日、イエメンにおける空爆を終了すると宣言していた。しかし、その後は早くも空爆をを再開したことが確認されていることが、原油市場の不安をあおっている。基本的には、元の環境に戻っただけであり、原油供給のリスクプレミアムを加算する必要性は見当たらない。イランがイエメンの反体制派を本格支援するような動きを見せると話も変わってくるが、現段階ではそうした動きは確認できない。ただ、イエメン情勢関連のヘッドラインが増える中、原油相場はこうした動きを完全に無視することはできず、本日はブレント原油主導で安値是正の動きが優勢になった。一時的な上昇圧力とみているが、米国の過剰在庫環境を手掛かりに改めて売り込んでいく動きにはブレーキが掛かり、年初来高値に迫る動きを見せている。

オイル・ムーブメンツによると、5月9日まで4週間の石油輸出国機構(OPEC)10カ国の原油輸出量は日量2,313万バレルとなる見通し。前週から17万バレルの減少になる。ただ、これは製油所メンテナンスの影響が大きい季節要因と見られることで、マーケットの反応は限定されている。

本日は地政学的リスクがメインテーマになったが、一時的な相場上昇要因との評価で十分だろう。引き続き、「シェールオイルの減産兆候」と「足元の需給緩和」のどちらを重視するのかで決まる相場環境だと考えている。冷静に考えれば、シェールオイルの生産が日量数万バレル減少したとしても、大きな意味はない。それ以上にOPECからの供給が増えており、供給サイドで需給引き締め圧力が強まるような環境にはない。短期トレンドは明らかに上を向いているが、今後は高値是正の必要性が強く、下値不安の大きい価格水準と評価している。

ただ、シェールオイル生産が当面のピークを確認するステージを迎えているのも事実であり、将来の需給均衡化を先取りする動きが加速する流れには注意が必要。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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