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NY原油4日:米在庫統計の評価割れ、期近続伸・期先反落

小菅努マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

NYMEX原油4月限 前日比1.01ドル高

始値 50.61ドル

高値 51.95ドル

安値 49.60ドル

終値 51.53ドル

米エネルギー情報局(EIA)の週報を受けて、期近限月が続伸する一方、期先限月は反落した。

EIA発表の原油在庫(2月27日まで)は前週比+1,030.3万バレルと急増した。API発表の原油在庫は+290万バレルに留まっていたが、EIAは急激なペースで在庫積み増しが続いていることを再確認している。国内での増産傾向に変化が見られない一方、精油所向け需要は低迷しており、需給ギャップが在庫増として反映される展開が維持されている。ただ、WTI原油先物の受け渡し場所となるクッシング地区に限定すると+53.69万バレルと増加幅が抑制されたことで、期近4限月は買い反応を示している。

もっとも、在庫増加トレンドに変化はみられない以上、反発力は限定されよう。実際に、期先限月は強力な在庫積み増し圧力を背景に下落しており、本日は期近限月が買われたというよりも、当先の順ザヤ拡大に過熱感が強くなっていたことが、期近買い・期先売りという形で鞘バランスの修正を促した可能性の方が高いと考えている。

サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相は、需要は徐々に増加しており、今後も需要減退は見込んでいないことを明らかにした。今後も顧客が必要とする規模の供給を行うとして、改めて減産の必要性を否定している。その上で、昨年11月の石油輸出国機構(OPEC)総会で減産対応を見送ったことについては、歴史がその正しさを証明するとの見方を示した。サウジが需要拡大を報告するのは前月に続いて二回目であり、低価格と世界経済の拡大が、石油需要見通しの上振れを促していることがイメージされ易くなっている。もっとも、サウジはこれを理由に減産対応の必要性を否定しており、原油価格に対する評価は中立的なものに留まろう。

なお、前日はリビアの地政学的リスクが原油相場の上昇を促したが、本日は特に新たなリスクプレミアムを加算するような動きは見られなかった。リビアの原油供給低迷は周知されており、改めてリスクプレミアムを大きく織り込む必要性は乏しいと判断された模様だ。

原油相場急落を受けて需給バランスの歪みが解消に向かっているとの報告も増えているが、この時期から原油相場が反発してしまうと、需給均衡化をもたらすのに十分な生産調整が進まず、今後の反発力が限定されてしまうことになる。中長期的にはボトム圏に近づいているのは間違いないが、短期スパンでは依然として戻り売り対応の方に魅力を感じる。

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マーケットエッジ株式会社代表取締役/商品アナリスト

1976年千葉県生まれ。筑波大学社会学類卒。商品先物会社の営業本部、ニューヨーク事務所駐在、調査部門責任者を経て、2016年にマーケットエッジ株式会社を設立、代表に就任。金融機関、商社、事業法人、メディア向けのレポート配信、講演、執筆などを行う。商品アナリスト。コモディティレポートの配信、寄稿、講演等のお問合せは、下記Official Siteより。

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