中東の大国・サウジアラビアのアブドラ国王が死去した。サウジアラビアは世界原油生産の10~11%程度を占める世界有数の産油国とあって、国王の死去に伴い同国の原油政策に変更があるのか否かが注目を集めている。

国王死去の報を受けて、国際原油相場はまずは買い反応を示した。WTI原油先物相場の場合だと、1月22日に1バレル=46.31ドルで取引を終了していたのに対して、国王死去の報を受けた23日の時間外取引では一時47.76ドル(前日比+1.45ドル)までの上昇が確認されている。

国王死去で直ちに原油供給に混乱が生じる訳ではないが、王国における国王死去は産油政策修正の可能性を浮上させるため、サウジの産油政策の「不透明感」が原油価格に対して一定のリスクプレミアム加算を促したと考えている。

特に昨年後半以降は、国際原油需給の緩和状態にもかかわらず、サウジが一切の減産対応を拒否していることが、原油相場急落の一因だと言われている。従来であればサウジの責任で原油需給バランスが過度に歪む事態を回避してきたが、1)需要拡大ペースの鈍化と2)シェールオイルなど非在来型原油の増産を受けて、これ以上の国際シェア低下は容認できないと判断された結果である。

このため、国王死去によってサウジの産油政策にサプライズ的な変更があるとすれば、それは「増産」ではなく「減産」の可能性が高く、原油相場はこのイベントに価格上昇のリスクを感じ取った訳だ。仮に産油政策に変更がなくても、サウジ国内の政情不安、更には周辺国とのパワーバランスなどに変化が生じれば、原油供給体制に対しては大きな「不確実性」をもたらすことになる。

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■石油相交代の有無が焦点に

もっとも、現実問題としては国王死去によって直ちに産油政策が変更する可能性は低い。新国王にはサルマン皇太子が就任しているが、皇太子(新国王)はサウジの産油政策を監督する石油鉱物問題最高評議会の副議長であり、昨年下期に同国が原油需給バランスの修正を行わず、市場原理によって過剰供給構造を是正する決定を行った主要メンバーであるためだ。近年は、高齢の国王に代わって皇太子が評議会の実質的なリーダーともみられており、国王就任で直ちに産油政策を変更するとは考えづらい。

仮に産油政策を変更するとすれば絶好の機会になるが、ヌアイミ石油鉱物資源相の解任といったサプライズ的な動きが見られないのであれば、今後も「原油相場安→増産抑制→原油需給均衡化」を目指すフローは維持されよう。実務的には、ヌアイミ石油相が同国の減産見送り決定を強力に後押ししているとみられ、仮に石油相の変更が行われると、マーケットは改めてサウジの産油政策変更のリスクを織り込む必要性に迫られるだろう。

ただ、ヌアイミ石油相は高齢を理由に引退を希望しているにもかかわらず、これまでの実績から石油市場において強い尊敬を集めており、健康問題などが浮上しなければ、簡単な交代はないとみられる。アブドラ国王の下で決定された「原油需給バランスの歪みは市場機能に委ねる」という基本方針は、今後も継続される可能性が高い。

【NYMEX原油先物(5分足)】

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(画像出所:CMEウェブサイト)