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藤井叡王3連覇か、菅井八段奪取か――第8期叡王戦五番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
タイトル戦で振り飛車党との対戦は初めてとなる藤井叡王(筆者撮影)

 藤井聡太叡王(20)=竜王・王位・棋王・王将・棋聖に菅井竜也八段(30)が挑戦する第8期叡王戦(不二家主催)五番勝負は4月11日第1局が東京都千代田区「江戸総鎮守 神田明神」で行われる。

 史上最年少で六冠を達成し現在も名人戦で渡辺明名人に挑戦中の藤井叡王に対し、本棋戦初挑戦の菅井八段は王位1期のタイトル獲得実績を持つ。データを基に勝敗と展開を予想してみた。

<第8期叡王戦五番勝負日程>

第1局 4月11日 東京都千代田区「江戸総鎮守 神田明神」

第2局 4月23日 愛知県名古屋市「名古屋東急ホテル」

第3局 5月6日 愛知県名古屋市「か茂免」

第4局 5月28日 岩手県宮古市「浄土ヶ浜パークホテル」

第5局 6月17日 千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」

調子の比較では藤井叡王断然優位

<藤井叡王の最近10局>(相手の肩書きは対局当時)

2月18日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局

対渡辺明棋王 ○

2月23日 朝日杯将棋オープン戦準決勝

対豊島将之九段 ○

2月23日 朝日杯将棋オープン戦決勝

対渡辺名人 ○

2月25、26日 ALSOK杯王将戦七番勝負第5局

対羽生善治九段 ○

3月2日 順位戦A級

対稲葉陽八段 ○

3月5日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第3局

対渡辺棋王 ●

3月8日 順位戦A級プレーオフ

対広瀬章人八段 ○

3月11、12日 ALSOK杯王将戦七番勝負第6局

対羽生九段 ○

3月19日 棋王戦コナミグループ杯五番勝負第4局

対渡辺棋王 ○

4月5、6日 名人戦七番勝負第1局

対渡辺名人 ○

<菅井八段の最近10局>

1月16日 NHK杯

対八代弥七段 ●

1月20日 叡王戦本戦

対石井健太郎六段 ○

1月26日 竜王戦2組

対佐藤和俊七段 ○

2月1日 順位戦A級

対佐藤天彦九段 ●

2月13日 叡王戦本戦

対佐藤天彦九段 ○

3月2日 順位戦A級

対広瀬章人八段 ●

3月6日 叡王戦本戦

対本田奎五段 ○(千日手指直し)

3月16日 叡王戦本戦挑戦者決定戦

対永瀬拓矢王座 ○

3月22日 王座戦二次予選

対杉本昌隆八段 ●(千日手指直し)

3月27日 竜王戦2組

対佐藤康光九段 ●

 藤井叡王の直近10局は9勝1敗と変わらず順調。デビュー以来の通算勝率が8割を超えているから普通の棋士と同じ基準で語ることはできないレベルだ。

 一方の菅井八段は叡王戦で挑戦を決めてから連敗し、直近10局は5勝5敗と五分の成績。

 調子の比較では断然藤井叡王優位と見ることができるだろう。

直接対決は拮抗。菅井八段の振り飛車に注目

 直接対決は過去8戦して藤井叡王の5勝3敗(2千日手)と拮抗、昨年8月に行われた順位戦A級でも中飛車を用いた菅井八段がねじり合いを制している。そのほかの対局も菅井八段は四間飛車、三間飛車と振り飛車を使いこなし接戦に持ち込んでおり、今回の五番勝負では多彩な「振り飛車ローテーション」が見られそうだ。

 藤井叡王は対中飛車には急戦、四間飛車と三間飛車には居飛車穴熊や左美濃などの持久戦を用いる可能性が高い。

 調子や実績など総合的に見れば藤井叡王優位だが、五番勝負の序盤で菅井八段が先行する流れになれば十分奪取のチャンスはあるだろう。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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