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藤井竜王、名人挑戦へ突き進むか――第81期順位戦A級8回戦、藤井聡太竜王-永瀬拓矢王座戦展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
名人挑戦権争いで7回戦終了時トップの藤井聡太竜王(筆者撮影)

 渡辺明名人(38)への挑戦権を争う第81期順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)A級は8回戦が2月1日一斉に行われる。

 トップを走る藤井聡太竜王(20)=王位・叡王・王将・棋聖は永瀬拓矢王座(30)と名古屋将棋対局場で対戦する。藤井竜王は残り2局を連勝で挑戦、現在6番手の永瀬王座も他力ながらプレーオフ進出の可能性を残している。

 最近の両者の調子とデータを基に勝敗と展開を予想してみた。

<順位戦A級成績>(丸数字は現時点の成績順。段位のあとの数字はリーグ順位)

①藤井竜王(9)6勝1敗

②斎藤慎太郎八段(1)5勝2敗

③広瀬章人八段(5)5勝2敗

④菅井竜也八段(8)5勝2敗

⑤豊島将之九段(4)4勝3敗

⑥永瀬王座(6)4勝3敗

⑦稲葉陽八段(10)3勝4敗

⑧佐藤天彦九段(3)2勝5敗

⑨糸谷哲郎八段(2)1勝6敗

⑩佐藤康光九段(7)0勝7敗 *陥落

藤井竜王の調子がまさる

<藤井竜王の最近10局>

12月8日 棋王戦コナミグループ杯本戦敗者復活戦2回戦

対羽生善治九段 ○

12月19日 棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定二番勝負第1局

対佐藤天彦九段 ○

12月23日 順位戦A級

対佐藤九段 ○

12月27日 棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定二番勝負第2局

対佐藤九段 ○

1月8、9日 ALSOK杯王将戦七番勝負第1局

対羽生九段 ○

1月15日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対阿久津主税八段 ○

1月15日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対増田康宏六段 ○

1月18日 順位戦A級

対豊島将之九段 ○

1月21、22日 ALSOK杯王将戦七番勝負第2局

対羽生九段 ●

1月28、29日 ALSOK杯王将戦七番勝負第3局

対羽生九段 ○

<永瀬王座の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

11月18日 順位戦A級

対糸谷哲郎八段 ○

11月22日 ALSOK杯王将戦リーグ

対服部慎一郎五段 ●

11月28日 叡王戦予選

対渡辺明名人 ○

11月28日 叡王戦予選

対羽生善治九段 ○

12月15日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対郷田真隆九段 ○

12月20日 順位戦A級

対佐藤康光九段 ○

1月12日 順位戦A級

対広瀬章人八段 ●

1月15日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対増田康宏六段 ●

1月19日 竜王戦1組

対森内俊之九段 ○

1月24日 叡王戦本戦

対出口若武六段 ○

 藤井竜王の直近10局は9勝1敗と絶好調を維持しており、どこにもスキは見当たらないように思える。ただし、順位上位の2敗と3敗が多く、わずかな可能性として3人以上のプレーオフにもつれると、リーグ順位下位から順に勝ち抜くパラマス式トーナメントになるため挑戦への道のりが遠くなる。

 永瀬王座の直近10局は7勝3敗と順調だが、調子の比較では藤井竜王が優位に立っている。

直接対決は藤井竜王がリード、戦型は角換わりが本命

 直接対決は15局あって藤井竜王が11勝4敗(2千日手)と大きくリードしている。ただし2022年度驚異的な勝率を誇る藤井竜王の先手番(25勝1敗1千日手)でただ一つ土を付けたのは永瀬王座だ。

 順位戦は先後が決まっており本局は永瀬王座が先手。主導権を取りやすい先手番の利を最大限に生かし秘策を練って臨むことは間違いない。

 過去のデータからは角換わりが本命、相掛かりや雁木の可能性もあるだろう。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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