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藤井竜王A級首位守れるか――第81期順位戦A級7回戦、藤井聡太竜王-豊島将之九段戦展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
20歳で五冠を保持し数々の記録を塗り替えている藤井竜王(筆者撮影)

 渡辺明名人(38)への挑戦権を争う第81期順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)A級は1月18日に7回戦最後の1局、藤井聡太竜王(20)-豊島将之九段(32)戦が大阪府大阪市「関西将棋会館」で行われる。

 ここまで5勝1敗とトップを走る藤井竜王(20)=王位・叡王・王将・棋聖を追う2敗グループは5勝2敗の斎藤慎太郎八段(1位)、広瀬章人八段(5位)、菅井竜也八段(8位)に加え4勝2敗の豊島九段(4位)の4人。

 前期B級1組から昇級したばかりの藤井竜王は順位9位のため本局に敗れると挑戦権争い5番手に後退する。

 データを基に勝敗と展開を予想してみた。

藤井竜王は絶好調も、過密スケジュールが不安材料

<藤井竜王の最近10局>

11月25、26日 竜王戦七番勝負第5局

対広瀬章人八段 ●

11月29日 棋王戦コナミグループ杯本戦敗者復活戦1回戦

対伊藤匠五段 ○

12月2、3日 竜王戦七番勝負第6局

対広瀬八段 ○

12月8日 棋王戦コナミグループ杯本戦敗者復活戦2回戦

対羽生善治九段 ○

12月19日 棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定二番勝負第1局

対佐藤天彦九段 ○

12月23日 順位戦A級

対佐藤九段 ○

12月27日 棋王戦コナミグループ杯挑戦者決定二番勝負第2局

対佐藤九段 ○

1月8、9日 ALSOK杯王将戦七番勝負第1局

対羽生九段 ○

1月15日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対阿久津主税八段 ○

1月15日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対増田康宏六段 ○

<豊島九段の最近10局>

11月11日 ALSOK杯王将戦リーグ

対服部慎一郎五段 ○

11月15日 ALSOK杯王将戦リーグ

対渡辺明名人 ○

11月22日 ALSOK杯王将戦リーグ

対羽生善治九段 ●

11月28日 叡王戦予選

対行方尚史九段 ●

12月15日 ヒューリック杯棋聖戦2次予選

対稲葉陽八段 ○(千日手指直し)

12月22日 順位戦A級

対広瀬章人八段 ●

12月28日 竜王戦2組

対佐々木慎七段 ○

1月6日 ヒューリック杯棋聖戦2次予選

対大橋貴洸六段 ●

1月14日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対久保利明九段 ○

1月14日 朝日杯将棋オープン戦本戦

対菅井竜也八段 ○

 藤井竜王と豊島九段の調子の比較では直近10局は藤井竜王が9勝1敗、豊島九段が6勝4敗と明らかな差がある。

 藤井竜王にとって気がかりなのは10月から12月まで全国各地を転戦し移動日や地元でのイベントを伴う竜王戦の防衛戦を戦った後、年初からは再び2日制タイトル戦の王将戦が始まり、本局も朝日杯本戦から中2日の過密スケジュールで臨むということだ。20歳の若さなので体力は十分と思われるが、朝日杯の2局はいずれも苦しい戦いで、疲れが残っている可能性はある。

 豊島九段はこのところほぼ週1の対局ペースで、直近も2連勝し上り調子だ。

 総合的には藤井竜王優位だが、豊島九段にも十分チャンスはあるとみる。

戦型は角換わりが大本命

 過去の直接対決は藤井竜王の19勝11敗(1千日手)で現在6連勝中と、当初の苦手意識(初手合いから6連敗)は完全に克服した。

 順位戦は先後が決まっていて本局は藤井竜王の先手。データからは角換わりが大本命だが、同じ戦法を続けると相手の研究にハマるリスクもあるため藤井竜王が意表をついて久々に相掛かりを選ぶ可能性もあると思われる。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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