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藤井竜王、年度内六冠に望みつなぐか――第48期棋王戦コナミグループ杯 藤井聡太竜王-伊藤匠五段戦展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
六冠の期待がかかる藤井聡太竜王は棋王挑戦まで4連勝が必要(筆者撮影)

 渡辺明棋王(38)=名人への挑戦権を争う第48期棋王戦コナミグループ杯(共同通信社主催)は11月29日東京都渋谷区「将棋会館」で本戦敗者復活戦1回戦、藤井聡太竜王(20)-伊藤匠五段(20)の対局が行われる。

 棋王戦本戦は本戦ベスト4からは2敗失格制で、準決勝で敗れても敗者復活戦に回ることができる。藤井竜王=王位・叡王・王将・棋聖は準決勝で佐藤天彦九段(34)に敗れ、同じく準決勝で羽生善治九段(52)に敗れた伊藤五段と敗者復活戦1回戦を争う。勝者は佐藤九段との挑戦者決定二番勝負(敗者復活組は2連勝が必要)進出をかけ羽生九段と対戦する。

 藤井竜王にとっては年度内六冠、伊藤五段にとってはタイトル戦初出場の望みがかかる注目局の勝敗と展開を、データを基に予想してみた。

藤井竜王は好調維持

<藤井竜王の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

10月12日 順位戦A級

対斎藤慎太郎八段 ○

10月17日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対豊島将之九段 ○

10月21、22日 竜王戦七番勝負第2局

対広瀬章人八段 ○

10月28、29日

竜王戦七番勝負第3局

対広瀬八段 ○

11月3日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対佐藤天彦九段 ●

11月6日 将棋日本シリーズ準決勝

対稲葉陽八段 ○

11月8、9日 竜王戦七番勝負第4局

対広瀬八段 ○

11月14日 順位戦A級

対広瀬八段 ○

11月20日 将棋日本シリーズ決勝

対斎藤八段 ○

11月25、26日 竜王戦七番勝負第5局

対広瀬八段 ●

<伊藤五段の最近10局>

9月6日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対石川陽生七段 ○

9月12日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対増田康宏六段 ○

9月21日 ヒューリック杯棋聖戦1次予選

対杉本和陽五段 ●

9月30日 叡王戦予選

対石田直裕五段 ●

10月3日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対高野智史六段 ●

10月11日 順位戦C級1組

対金井恒太六段 ○

11月1日 王座戦1次予選

対近藤正和七段 ○

11月5日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対羽生善治九段 ●

11月8日 順位戦C級1組

対日浦市郎八段 ○

11月25日 王座戦1次予選

対飯塚祐紀七段 ○

 藤井竜王の直近10局は8勝2敗と順調。進行中の竜王戦七番勝負第5局で広瀬八段に敗れ(藤井竜王の3勝2敗)追い上げられてはいるが、トップ棋士相手の連戦でも勝率8割ペースは変わらず安定している。

 伊藤五段は昨年度の勝率1位(45勝10敗、8割1分8厘)、また新人王を獲得するなど「藤井世代」の一員として頭角を現してきたが、直近10局は6勝4敗とまずまずの成績。調子の比較では藤井竜王優位と見ていいだろう。

藤井竜王先手なら角換わり、伊藤五段先手なら相掛かりが本命

 直接対決はテレビ棋戦のNHK杯1局だけで藤井竜王が勝っている。そのときは伊藤五段が先手で得意の相掛かりを採用した。

 本局の先後は振り駒で決められるため最近の戦型選択の傾向からは藤井竜王先手なら角換わりが本命。伊藤五段先手なら相掛かりが本命で角換わりを選ぶ可能性もあるだろう。序盤から互いの研究をぶつけ合う激しい戦いになることが予想される。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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