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里見香奈女流五冠の試験将棋いよいよ開幕――棋士編入試験五番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
女性として初めて棋士編入試験に挑む里見香奈女流五冠(筆者撮影)

 女性として初の棋士・四段編入を目指す里見香奈女流五冠(30)の棋士編入試験五番勝負は8月18日関西将棋会館で第1局の徳田拳士四段(24)戦が行われる。

 女流棋界の第一人者である里見女流五冠=清麗・女流王座・女流王位・女流王将・倉敷藤花は今年5月27日プロ公式戦で10勝4敗と規定の成績に達し受験資格を得た。

 五番勝負は3勝で合格(フリークラス編入)、3敗した時点で失格となる。データを基に勝敗と展開を予想してみた。

初戦が最大の関門か

<五番勝負の相手と対局日程>

第1局 徳田拳士四段 8月18日

第2局 岡部怜央四段(23) 対局日未定

第3局 狩山幹生四段(20) 対局日未定

第4局 横山友紀四段(22) 対局日未定

第5局 高田明浩四段(20) 対局日未定

<里見女流五冠の最近10局>(公式戦のみ)

5月6日 棋王戦コナミグループ杯予選

対冨田誠也四段 ○

5月27日 棋王戦コナミグループ杯予選

対古森悠太五段 ○

※本局の勝利で受験資格取得

6月24日 ヒューリック杯棋聖戦1次予選

対浦野真彦八段 ○

6月24日 ヒューリック杯棋聖戦1次予選

対出口若武六段 ○

7月4日 NHK杯本戦

対今泉健司五段 ●

7月19日 加古川青流戦

対柵木幹太三段 ○

7月19日 加古川青流戦

対折田翔吾四段 ○

8月5日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対星野良生五段 ●

8月12日 朝日杯将棋オープン戦1次予選

対有森浩三八段 ●

8月15日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対阿久津主税八段 ●

<徳田四段の最近10局>

6月16日 順位戦C級2組

対今泉健司五段 ●

6月27日 加古川青流戦

対藤本渚三段 ○

7月7日 叡王戦予選

対高田明浩四段 ○

7月7日 叡王戦予選

対折田翔吾四段 ○

7月9日 朝日杯将棋オープン戦1次予選

対山崎由太郎アマ ○

8月1日 伊藤園お~いお茶杯王位戦予選

対福崎文吾九段 ○

8月5日 朝日杯将棋オープン戦1次予選

対脇謙二九段 ○

8月5日 朝日杯将棋オープン戦1次予選

対井上慶太九段 ○

8月8日 順位戦C級2組

対岡部怜央四段 ○

8月12日 順位戦C級2組

対中村亮介六段 ○

 両者の直近10局は里見女流五冠が6勝4敗と5月の受験資格取得後、星が伸び悩んでいるのに対し徳田四段は9勝1敗(9連勝)と絶好調で、今年度12勝1敗(0.923)と全棋士中トップの高勝率でもある。里見女流五冠にとって五番勝負は初戦から難敵を迎えることになった。

 調子の比較では徳田四段優位に思えるが、里見女流五冠も直近の阿久津八段との対局は敗れたものの粘り強い指し回しを見せ熱戦だった。大舞台に強い里見女流五冠が力を出し切れば互角に近い勝負とみる。

 なお対戦する5人との公式戦直接対決は里見女流五段から見て対狩山四段0勝1敗、対高田四段1勝0敗で、あとは初手合いである。

中飛車対居飛車持久戦が本命

 ここ一番の勝負で里見女流五冠が用いる戦法は中飛車がほとんどだ。徳田四段は居飛車党で振り飛車対策は居飛車穴熊を軸とした持久戦志向なので、戦型はどちらが先手になっても里見女流五冠の中飛車対徳田四段の居飛車持久戦を本命に予想する。

 女性が初めて棋士編入に挑む注目の五番勝負、両対局者が実力を出し切る良い内容の将棋を期待している。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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