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藤井棋聖防衛か、永瀬王座追いつくか――第93期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第4局展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
3連覇まであと1勝としている藤井聡太棋聖(筆者撮影)

 藤井聡太棋聖(19)=竜王・王位・叡王・王将に永瀬拓矢王座(29)が挑戦する第93期ヒューリック杯棋聖戦(産経新聞社主催)五番勝負は第3局までを終え、藤井棋聖が2勝1敗とリードし3連覇に王手をかけている。

 第4局は7月17日愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」で行われる。データを基に勝敗と展開を予想してみた。

<ヒューリック杯棋聖戦五番勝負日程とこれまでの勝敗>

第1局 6月3日 兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」

永瀬王座(後手)勝ち(千日手指し直し・2回)

第2局 6月15日 新潟県西蒲区「高志の宿 高島屋」

藤井棋聖(後手)勝ち

第3局 7月4日 千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」

藤井棋聖(先手)勝ち

第4局 7月17日 愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」

第5局 7月27日 静岡県沼津市「沼津御用邸東附属邸第1学問所」

調子を上げてきた藤井棋聖

<藤井棋聖の最近10局>

5月6日 王座戦本戦

対大橋貴洸六段 ●

5月15日 叡王戦五番勝負第2局

対出口若武六段 ○(千日手指し直し)

5月24日 叡王戦五番勝負第3局

対出口六段 ○

6月3日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局

対永瀬王座 ●(千日手指し直し・2回)

6月15日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局

対永瀬王座 ○

6月22日 順位戦A級

対佐藤康光九段 ○

6月28、29日 お~いお茶杯王位戦七番勝負第1局

対豊島将之九段 ●

7月4日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局

対永瀬王座 ○

7月8日 棋王戦コナミグループ杯本戦

対中川大輔八段 ○

7月13、14日 お~いお茶杯王位戦七番勝負第2局

対豊島九段 ○

<永瀬王座の最近10局>(相手の肩書は対局当時・未放映のテレビ対局を除く)

4月15日 ヒューリック杯棋聖戦本戦準決勝

対佐々木大地六段 ○

4月20日 竜王戦1組

対丸山忠久九段 ○

4月25日 ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦

対渡辺明名人 ○

5月13日 竜王戦1組決勝

対佐藤天彦九段 ○

6月3日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局

対藤井棋聖 ○(千日手指し直し・2回)

6月9日 順位戦A級

対豊島将之九段 ○

6月15日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局

対藤井棋聖 ●

6月27日 叡王戦予選

対丸山忠久九段 ○

7月4日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局

対藤井棋聖 ●

7月8日 順位戦A級

対稲葉陽八段 ●

 両者とも直近10局の成績は7勝3敗と順調だ。

 ただし藤井棋聖は今月に入って3連勝と上り調子なのに対し、永瀬王座は4月の年度初めから負けなしの絶好調だったのに、ここにきて1勝3敗と黒星が集まり、やや勢いが落ちてきたようにも思われる。

 それでも今回の五番勝負では第1局、第2局とも永瀬王座が主導権を握っていた時間が長かった。第4局は主導権を握りやすい先手番だけに好勝負が期待できる。

第4局は角換わりに進む可能性大

 直接対決は過去13戦して藤井棋聖が9勝4敗(2千日手)と勝ち越しており、現在の調子を含め総合的にも藤井棋聖が優位だ。

 戦型は第4局の先手番は永瀬王座のため最近多用している角換わりが大本命。そうでなければ相掛かりを選ぶ可能性が高いだろう。

 藤井棋聖は相手の注文を正面から受けて立つことがほとんどなので、本局も互いの研究をぶつけ合うねじり合いが予想される。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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