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藤井聡太棋聖への挑戦権をかけ強豪4人が激突――第93期ヒューリック杯棋聖戦準決勝展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
藤井聡太棋聖(竜王・王位・叡王・王将)は19歳の若さで五冠を保持する(筆者撮影)

 藤井聡太棋聖(19)=竜王・王位・叡王・王将への挑戦者を決める第93期ヒューリック杯棋聖戦(産経新聞社主催)は本戦ベスト4が決まり、準決勝は4月14日に渡辺明名人(37)-久保利明九段(46)戦、翌15日に永瀬拓矢王座(29)-佐々木大地六段(26)戦が東京都渋谷区「将棋会館」で行われる。

 佐々木六段以外はタイトル戦番勝負の経験豊富で、誰が挑戦者になっても防衛戦を戦う藤井棋聖にとって難敵といえよう。データを基に挑戦権の行方を予想してみた。

渡辺名人やや有利か

 それぞれの対戦成績と最近10局(未放映のテレビ対局を除く)の勝敗は以下のとおり。

<渡辺名人の対戦成績と最近10局>

対永瀬王座 19勝6敗

対久保九段 22勝17敗

対佐々木六段 0勝1敗

最近10局 6勝4敗

<永瀬王座の対戦成績と最近10局>

対渡辺名人 6勝19敗

対久保九段 10勝3敗

対佐々木六段 1勝1敗

最近10局 6勝4敗

<久保九段の対戦成績と最近10局>

対渡辺名人 17勝22敗

対永瀬王座 3勝10敗

対佐々木六段 0勝1敗

最近10局 6勝4敗

<佐々木六段の対戦成績と最近10局>

対渡辺名人 1勝0敗

対永瀬王座 1勝1敗

対久保九段 1勝0敗

最近10局 7勝3敗

 過去の対戦成績では渡辺名人(棋王)が頭一つリードし、永瀬王座がそれに続く。上記データ以外ではベテラン久保九段が藤井棋聖に3勝3敗と互角の星を残しており、底力を示している。

 また、対局数の少ない佐々木六段は誰にも負け越していないのがプラス材料で、若さと勢いで一気に駆け抜ける可能性も少なくない。

 4人とも安定した成績でまずまずの調子だから差はわずかだが、総合的に挑戦権争いは渡辺名人やや優位と見る。

ねじり合いの長期戦が多そう

 今回のベスト4進出者の中で振り飛車党は久保九段のみ。準決勝で対戦する渡辺名人との過去の対局はいずれもねじり合いの中盤に進んでおり、今回も長期戦は必至だ。戦型は久保九段先手なら三間飛車、後手なら三間飛車か四間飛車が本命。

 永瀬王座-佐々木六段戦は居飛車党同士の対決で最近の戦型選択からはどちらが先手になっても角換わりか相掛かりに進む可能性が高く、永瀬王座先手番の時は矢倉の可能性もあるだろう。

 40代から20代まで棋風の異なる4人の対戦は、それぞれの持ち味を生かした好局が期待される。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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