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「最強の挑戦者」豊島竜王が藤井王位に挑む――第62期お~いお茶杯王位戦七番勝負展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
これまで藤井聡太王位に6勝1敗と大きく勝ち越している豊島将之竜王(筆者撮影)

 藤井聡太王位(18)に豊島将之竜王(31)が挑戦する第62期お~いお茶杯王位戦七番勝負(新聞三社連合主催)は第1局が6月29、30日に愛知県名古屋市「名古屋能楽堂」で行われる。

 破竹の快進撃を続ける藤井王位(棋聖)にとって豊島竜王(叡王)は大きく負け越している難敵だ。激戦必至の七番勝負をデータを基に予想してみた。

両者絶好調

<七番勝負日程>

第1局 6月29、30日 愛知県名古屋市「名古屋能楽堂」

第2局 7月13、14日 北海道旭川市「花月会館」

第3局 7月21、22日 兵庫県神戸市「中の坊瑞苑」

第4局 8月18、19日 佐賀県嬉野市「和多屋別荘」

第5局 8月24、25日 徳島県徳島市「渭水苑」

第6局 9月6、7日 神奈川県秦野市「元湯 陣屋」

第7局 9月28、29日 神奈川県秦野市「元湯 陣屋」

<藤井王位の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

5月6日 王座戦本戦

対深浦康市九段 ●

5月13日 順位戦B級1組

対三浦弘行九段 ○

5月17日 叡王戦本戦

対行方尚史九段 ○

5月31日 叡王戦本戦

対永瀬拓矢王座 ○

6月3日 順位戦B級1組

対稲葉陽八段 ●

6月6日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局

対渡辺明名人 ○

6月13日 順位戦B級1組

対屋敷伸之九段 ○

6月18日 ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局

対渡辺名人 ○

6月22日 叡王戦本戦準決勝

対丸山忠久九段 ○

6月26日 叡王戦挑戦者決定戦

対斎藤慎太郎八段 ○

<豊島竜王の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

3月6日 お~いお茶杯王位戦リーグ紅組

対斎藤慎太郎八段 ○

3月11日 お~いお茶杯王位戦リーグ紅組

対佐藤天彦九段 ○

3月15日 ヒューリック杯棋聖戦本戦

対鈴木大介九段 ○

4月2日 ヒューリック杯棋聖戦本戦

対山崎隆之八段 ●

4月7日 お~いお茶杯王位戦リーグ紅組

対澤田真吾七段 ○

4月30日 王座戦本戦

対三枚堂達也七段 ●

5月7日 お~いお茶杯王位戦リーグ紅組

対片上大輔七段 ○

5月24日 お~いお茶杯王位戦リーグ挑戦者決定戦

対羽生善治九段 ○

6月10日 順位戦A級

対佐藤天彦九段 ○

6月24日 棋王戦本戦

対冨田誠也四段 ○

 藤井王位は6月だけですでに6局と過密スケジュールが続いているのに直近10局の8勝2敗はさすがだ。叡王戦でも豊島叡王への挑戦を決めたばかりで、そちらの五番勝負と合わせ両者の「十二番勝負」が確定している。

 豊島竜王はこのところ月2、3局の理想的な対局ペースでじっくりコンディションを調整できたのは、長丁場の番勝負を戦ううえで好材料といえる。直近の星取りも8勝2敗と安定しており、調子の面でも互角以上に戦えそうだ。

直接対決は豊島竜王が大きくリード

<過去の直接対決と戦型> ※肩書は対局当時

2017年8月24日 棋王戦本戦

豊島八段(先)○-●藤井四段 角換わり(千日手指し直し)

2019年5月23日 銀河戦本戦Eブロック

豊島名人(先)○-●藤井七段 相掛かり

2019年7月23日 竜王戦決勝トーナメント

藤井七段(先)●-○豊島名人 角換わり

2019年10月7日 大阪王将杯王将戦リーグ

豊島名人(先)○-●藤井七段 後手ひねり飛車

2020年9月12日 将棋日本シリーズ

藤井二冠(先)●-○豊島竜王 横歩取り

2020年10月5日 王将戦リーグ

豊島竜王(先)○-●藤井二冠 相掛かり

2021年1月17日 朝日杯将棋オープン戦本戦

豊島竜王(先)●-○藤井二冠 角換わり

 両者の公式戦直接対決は豊島竜王が6勝1敗(1千日手)と大きくリード、藤井王位は6連敗のあと今年1月初勝利を挙げた。トップ棋士同士の勝敗はときに偏ることがあるが、藤井が初タイトルを得たのは成長過程にある昨年。今後は少しずつ星の差が縮まっていくと見ている。

 戦型は相居飛車中心、多彩な戦型を指しこなす豊島竜王が先手なら矢倉か角換わりが中心となりそう。藤井王位先手なら最近多用している相掛かりを志向することが予想されるが、後手の豊島竜王が横歩取りに誘導する可能性もあるだろう。

 総合すると、過去の直接対決の結果を重視し挑戦者わずかに有利と見るが、接戦になることはまちがいない。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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