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藤井七段、6月2日に棋聖戦準決勝――53日ぶりの公式戦は大一番

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
藤井聡太七段は初のタイトル挑戦まであと2勝(筆者撮影)

 渡辺明棋聖(36)への挑戦権を争う第91期ヒューリック杯棋聖戦(産経新聞社主催)決勝トーナメントはベスト4決定以降遠距離移動を伴う東西交流対局がストップしていたが、緊急事態宣言の解除に伴い6月2日に準決勝が行われることが発表された。

 最年少タイトル獲得記録がかかる藤井聡太七段(17)は佐藤天彦九段(32)と対局する。最新データを基に展開を予想してみた。

調子では藤井七段がまさる

<佐藤九段の最近10局>

12月13日 王位戦予選

対渡辺明三冠 ●

12月19日 順位戦A級

対木村一基王位 ○

1月17日 順位戦A級

対糸谷哲郎八段 ○

1月29日 順位戦A級

対広瀬章人八段 ●

2月5日 竜王戦ランキング戦1組

対広瀬章人八段 ○

2月23日 竜王戦ランキング戦1組

対稲葉陽八段 ●

2月27日 順位戦A級

対稲葉陽八段 ○

3月19日 棋聖戦決勝トーナメント

対船江恒平六段 ○

3月31日 竜王戦出場者決定戦1組

対佐藤康光九段 ●

4月10日 棋聖戦決勝トーナメント

対郷田真隆九段 ○

<藤井七段の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

2月29日 棋聖戦決勝トーナメント

対斎藤慎太郎八段 ○

3月3日 順位戦C級1組

対真田圭一八段 ○

3月6日 銀河戦本戦

対森内俊之九段 ○

3月9日 棋王戦予選

対出口若武四段 ●

3月12日 竜王戦ランキング戦3組

対高橋道雄九段 ○

3月16日 王座戦2次予選

対阿部隆八段 ○

3月20日 王位戦リーグ白組

対上村亘五段 ○

3月24日 王位戦リーグ白組

対稲葉陽八段 ○

3月31日 棋聖戦決勝トーナメント

対菅井竜也八段 ○(千日手指し直し)

4月3日 竜王戦ランキング戦3組

対千田翔太七段 ○

4月10日 王位戦リーグ白組

対菅井竜也八段 ○

 両者とも2カ月弱公式戦の対局がなくコンディションはほぼ互角と思われるが、最近10局の成績では佐藤九段6勝4敗、藤井七段9勝1敗と差がついており、藤井有利と見る。

 戦型は佐藤九段の先手番では矢倉と角換わりを使い分けており、昨年末までは相掛かりも見られた。後手番では先手矢倉に対しては急戦調の対策がメーン。以前得意としていた横歩取りを選んだのは1月29日の対広瀬八段戦1局のみ。

 藤井七段も相居飛車の先手番ではこのところ矢倉と角換わりを使い分けている。後手番では角換わりなら最新流行形、矢倉では急戦調と佐藤九段と選ぶ作戦の傾向は似ている。

直接対決は2年5か月ぶり

<過去の直接対決>

2018年1月14日 朝日杯本戦

藤井四段(先)○-●佐藤名人 ※肩書は対局当時

 両者とも各棋戦で活躍するスター棋士だが、直接対決は2年5カ月前の1局しかなく、そのときは藤井四段が佐藤名人に勝って大きなニュースになった。戦型は後手佐藤の誘導で横歩取りだった。

 最近のデータからは先手番が矢倉か角換わりを志向する可能性が高いが、佐藤九段が後手番になった時は「ここ一番」で用いる横歩取りに進む可能性も少なくないと予想する。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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