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海外スター棋士のイベント参加で囲碁ファンは増えるか

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
2018年ジャパン碁コングレスでペア碁を対局する黒嘉嘉七段(中央・筆者撮影)

 日本では古くから囲碁と将棋は二大盤上遊戯として親しまれてきた。だが、ここ10数年囲碁人口は減少が続いており「レジャー白書2018」によると囲碁人口は190万人と前年から10万人の減少。2009年の640万人に比べ3分の1以下になっている。

 対照的に将棋人口は700万人と前年から170万人の大幅増。これは頻繁にメディアに登場した藤井聡太七段(16)や永世七冠の資格を得た羽生善治九段(48)の影響が大きいだろう。

海外スター棋士が訪日するイベントが続々

 囲碁界ではここ数年、二度の七冠を達成した井山裕太棋聖(30)以外にメディアに頻繁に登場する棋士は少なかった。だが昨年から許家元碁聖(21)、張栩名人(39)、村川大介十段(28)と相次いで新しいタイトルホルダーが誕生し、棋界の様相は変化している。

 さらに今年4月には史上最年少棋士、仲邑菫初段(10)の誕生が注目を集めたが、本格的な囲碁ブームを予感させるまでにはもう少し時間がかかりそうだ。

 こうした状況で日本のプロ囲碁組織はファン層拡大のため「難局打開の一手」を探し、国際戦の舞台で活躍するスター棋士を日本のイベントに招き人気回復を図ろうと試みている。

 直近では6月30日に兵庫県宝塚市「宝塚ホテル」で行われる「ワールド碁フェスティバル」(主催・関西棋院、共催・宝塚市、兵庫県阪神北県民局https://kansaikiin.jp/events/worldgofestival.html)が予定されている。

 このイベントは大阪で開かれる国際会議G20サミットを記念してのもので、国際戦で数多く優勝経験のあるチョ・フニョン九段(韓国)、常昊九段(中国)らの重鎮を始め、モデルとしても活躍中の人気女性棋士・黒嘉嘉七段(台湾)、日本からは趙治勲名誉名人、村川十段らが参加、ペア碁やトークショー、ファンとの懇親パーティーなど盛りだくさんのプログラムだ。

 当日は宝塚歌劇団OGによるショーも予定されているそうで、囲碁を始めたばかりのファンでも楽しめるような内容になっている。

 翌月の7月12日~15日には石川県金沢市「KKRホテル金沢」で「第4回ジャパン碁コングレスin 金沢」(主催・ジャパン碁コングレス実行委員会、共催・関西棋院http://japangocongress.p-kit.com/)が予定されている。

 こちらは世界各国からアマチュアの囲碁ファンが選手として参加し、日本の選手と競いながら世界のトップ棋士と交流する企画で、昨年夏は宝塚で開催されすっかり定番の行事となった。

 どちらのイベントにも最年少棋士仲邑初段は公開対局で参加する予定。

将棋界に追いつくには若年層の掘り起こしが必須

 筆者は囲碁も将棋も数十年のキャリアがありライフワークとして取り組んできたが、囲碁界はファンの年齢層が圧倒的に高いと感じている。

 将棋のイベントに顔を出すと10代、20代、女性ファンも多く見かけるのに、囲碁の場合はほとんどが60代以上のファンでキャリア数十年のアマ高段者も多い。手元には70代が全体の半数近く、そのうち男性が約90%という数字を示した統計もある。

 どちらかといえば経済的に豊かな層が多いのは囲碁ファンのように感じるが、このままでは10年、20年先にファン数のさらなる減少が予想される。

 将棋界は野球やサッカーのようにプレイしなくても見るだけで楽しめるファン層の拡大に成功した。囲碁界も若い人たちに気軽に囲碁に接してもらえるようなイベント、取り組みを継続的に行うことが求められている。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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