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藤井聡太七段3年連続本戦出場なるか――第32期竜王戦展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
10代でのタイトル獲得が期待されている藤井聡太七段(筆者撮影)

 第32期竜王戦(読売新聞主催)ランキング戦4組決勝、菅井竜也七段(27)-藤井聡太七段(16)戦は5月31日大阪市の関西将棋会館で行われる。

 最年少タイトル獲得が期待される藤井七段にとって対戦相手の菅井七段は王位1期の実力者で強敵。本戦進出がかかる大一番の展開をデータから予想してみた。

調子は両者まずまずも藤井七段に不安材料

<菅井七段の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

4月4日 棋聖戦決勝トーナメント

対羽生善治九段〇

4月9日 王位戦挑戦者決定リーグ紅組

対佐々木大地四段○

4月17日 棋聖戦決勝トーナメント

対渡辺明二冠●

4月26日 竜王戦ランキング戦4組

対西尾明六段○

5月1日 王位戦挑戦者決定リーグ紅組

対木村一基九段●

5月7日 王位戦挑戦者決定リーグ紅組

対稲葉陽八段〇

5月10日 王座戦本戦

対中村太地七段〇

5月16日 竜王戦ランキング戦4組準決勝

対及川拓馬六段○

5月21日 王将戦1次予選

対竹内雄悟五段●

5月23日 王位戦挑戦者決定リーグ紅組

対阿久津主税八段〇

<藤井七段の最近10局>(未放映のテレビ対局を除く)

3月5日 順位戦C級1組

対都成竜馬五段〇

3月8日 竜王戦ランキング戦4組

対畠山成幸八段○

3月11日 棋聖戦2次予選

対久保利明九段●

3月27日 竜王戦ランキング戦4組

対中田宏樹八段〇

4月12日 王将戦1次予選

対森内俊之九段○

4月19日 銀河戦本戦Eブロック

対行方尚史八段〇

4月24日 竜王戦ランキング戦4組準決勝

対高見泰地叡王〇

5月9日 王将戦1次予選

対北浜健介八段〇

5月15日 棋王戦予選

対牧野光則五段○

5月28日 棋王戦予選

対都成竜馬五段●

 この数カ月の成績はどちらも実力を示す星取りで勝率は高い。

 ただ、藤井七段は本棋戦準決勝の高見叡王(当時)との対局は中盤で何度もミスが出て、最後は相手の乱れに救われての逆転勝ち。さらに直近の対局でもこれまで5勝0敗と圧倒していた都成五段に終始押され気味の内容で敗れたことが気がかりだ。

直接対決は菅井七段の2連勝。振り駒がカギか

<菅井七段vs藤井七段全成績>

2017年8月4日 王将戦1次予選

菅井(先手)勝ち

2018年9月3日 棋王戦本戦

菅井(先手)勝ち

 直接対決はこれまで2局あり、いずれも先手中飛車に振った菅井七段が中盤以降のねじりあいで貫禄を示している。

 広瀬章人竜王、渡辺二冠、羽生九段といった居飛車をメーンとするトップ棋士相手に勝っている(いずれも1勝0敗)藤井七段にとって、振り飛車を得意とする菅井七段は戦型の相性的に苦手なのかもしれない。

 筆者の予想は、振り駒の結果が勝敗に大きく影響すると思っている。

 菅井七段先手なら5筋位取り中飛車で菅井乗り。藤井七段先手なら後手のゴキゲン中飛車あるいは角交換振り飛車が予想され、やや藤井乗り。トータルでは微差で菅井七段有利と見る。

 デビュー時の29連勝からタイトルホルダー以上に注目を集めてきた藤井七段にとって、3年連続ランキング戦優勝と本戦出場がかかる本局は大きな試練といっていいだろう。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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