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藤井聡太七段逆転昇級なるか――順位戦C級1組最終日展望

古作登大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員
ファンの注目を一身に集める藤井七段(筆者撮影)

 第77期順位戦(朝日新聞、毎日新聞主催)C級1組は3月5日に東西の将棋会館で最終11回戦が行われる。

 前節、デビュー以来の順位戦連勝が18でストップした藤井聡太七段(16)は8勝1敗で4番手。B級2組への昇級枠2つを巡っての争いをデータから予想してみた。

自力は近藤五段、杉本八段

 10回戦(抜け番あり)を終えた時点で全勝者が消え、8勝1敗は順位上位から近藤誠也五段(22)、杉本昌隆八段(50)、船江恒平六段(31)、藤井七段の4人。近藤五段と、杉本八段は自分が勝てば昇級となる。

 7勝2敗グループではこの4人より順位が上の高崎一生六段(32)に昇級の可能性が残されている。

 

<昇級候補の最終戦相手との対戦成績>

近藤五段 1勝 - 増田康宏六段 2勝

杉本八段 0勝 - 千葉幸生七段 0勝 *初手合い

船江六段 2勝 - 金井恒太六段 1勝

藤井七段 4勝 - 都成竜馬五段 0勝

高崎六段 0勝 - 小林裕士七段 2勝

9勝1敗「頭ハネ」の多いC級1組

 8勝1敗グループ4人の対戦相手はすべて今季順位戦ここまで5勝4敗。どのカードも相性をはっきり示すほどの対戦数はこなしていないが、自力昇級が可能な近藤五段、杉本八段にとって楽観できるデータではない。

 注目は10回戦で昇級争いのライバル藤井七段を直接対決で下した近藤五段がその勢いを維持できるかどうか。また他力とはいえ船江六段も前節で杉本八段を破って追い上げムード、自分が勝ち上位2人のうち1人負ければ逆転昇級なので期待が持てる。

 4番手の藤井七段にもチャンスはあるが、現時点では自分が勝って上位3人のうち2人が敗れるという厳しい条件だから、運を天に任せるよりないだろう。

 また5番手の高崎六段は自分が勝ち、8勝1敗グループ4人のうち3人が負けた場合のみ大逆転昇級となる。

 過去このクラスでは順位の関係(全勝以外は同星順位優先)により9勝1敗で昇級できなかったケース(通称=頭ハネ)が何度も出ており、渡辺明二冠や丸山忠久九段といった、のちにA級に上りタイトルを取るような実力派の棋士も苦杯をなめている。

 A級からC級2組まで全5クラス、これまで順位戦では最終日に数々の逆転劇が起こってきた。今年はどんなドラマが生まれるのか、深夜まで目が離せない。

大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員

1963年生まれ。東京都出身。早稲田大学教育学部教育学科教育心理学専修卒業。1982年大学生の時に日本将棋連盟新進棋士奨励会に1級で入会、同期に羽生善治、森内俊之ら。三段まで進み、退会後毎日コミュニケーションズ(現・マイナビ)に入社、1996年~2002年「週刊将棋」編集長。のち囲碁書籍編集長、ネット事業課長を経て退職。NHK・BS2「囲碁・将棋ウィークリー」司会(1996年~1998年)。2008年から大阪商業大学アミューズメント産業研究所で囲碁・将棋を中心とした頭脳スポーツ、遊戯史研究に従事。大阪商業大学公共学部助教(2018年~)。趣味は将棋、囲碁、テニス、ゴルフ、スキューバダイビング。

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