Yahoo!ニュース

派遣切り・雇い止めには早めの対処を! 支援団体が電話相談会も開催

今野晴貴NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。
(写真:アフロ)

 6月末で派遣切り・雇い止めに遭ったという派遣労働者からの相談が相次いでいる。派遣会社の担当者から次のような通告を受けたという相談だ。

「6月いっぱいで今の派遣先は終了です」

「こういう時期なので次の派遣先の紹介が難しいです」

「うちでは紹介できる仕事がないので、自分でも仕事を探しみてください」

 雇い止めとは言われていなくても、これらはみな法的にみれば、雇い止めにあたる。

 この間、国は一貫して、派遣会社に対して、雇い止めをせずに雇用を維持する努力をするよう要請してきている。

 それにもかかわらず、いったいなぜ、派遣切り・雇い止めは横行しているのだろうか。また、派遣会社は雇用責任についてどのように考えているのだろうか。そして、雇い止めに遭ったり、その恐れを感じていたりする派遣労働者にはどのような対処法があるのだろうか。

派遣会社は国に「雇用の安定と保護に努めて」いくと報告

 実は、派遣業界の事業者団体である一般社団法人日本人材派遣協会と一般社団法人日本生産技能労務協会は、厚生労働省に対して派遣労働者の「雇用の安定と保護に努めて」いくと報告している。

 上記二団体が厚生労働省に提出した文書には、至る所に解雇を抑制しているとある。

新型コロナウイルス感染症に係る派遣労働者の雇用維持等に関して(報告)

「現在の労働者派遣契約の維持・継続を推進いたします」「派遣契約の継続にいたらなかった派遣社員につきましても、<中略>新たな就業先の提供に努め、雇用を維持すべく取り組んでおります」「すぐに新たな派遣先の提供に至らなかったケースにつきましても、一時的な休業の実施や教育・研修機会の提供など、<中略>政府の助成金などを活用させていただくことも含めて、派遣社員の安定と保護に努めてまいります」

 この報告では派遣事業者の雇用責任について明確に言及されており、各派遣事業者がこれに従えば、派遣切り・雇い止めは例外的なものになるはずだ。しかし、国への報告内容と派遣会社の実態は大きく異なっている。

 派遣会社が雇用責任を放棄して、派遣労働者を安易に雇い止めしている事例が全国各地の労働組合から数多く報告されているのだ。

 例えば、福岡県内で派遣として働く40代女性は、4月上旬に37度を超える熱が出て数日間仕事を休んだところ、大手派遣会社から、発熱している人には業務を任せられないと伝えられて、熱が下がった後も休業を継続させられたうえ、コロナの影響で事業を縮小するため人員が余るとして、6月末での雇い止めを宣告されたという(連合福岡ユニオン)。

 また、東京都内の飲食店で働く派遣労働者の50代男性は、9月末までの雇用契約であったにもかかわらず、緊急事態宣言後、派遣先の飲食店から自社の社員だけで運営することにしたと派遣会社(株式会社サポート・システム)に連絡があり、派遣会社からも中途解約されてしまったという。この派遣会社では、コロナ禍で雇用調整助成金を利用して休業補償をした実績はないそうだ(総合サポートユニオン)。

 さらに、東京都内で働く派遣労働者の40代女性は、コロナウイルス感染症の流行後、派遣先の正社員と同じく在宅勤務を認めてほしいとお願いしたことや派遣先の業績不振を理由に、派遣切りを通告され、さらに派遣会社(株式会社エキスパートスタッフ)からも6月末で雇い止めを宣告されたという。彼女もまた契約を更新したうえで、助成金を利用して休業補償をすることは検討してもらえなかったようだ。

 このように、6月末前後の雇い止めが相次いでいるのだ。それも、労働者側には非がなく、コロナの影響で業績が下がっているという理由で派遣先が派遣切りし、さらに派遣会社も雇い止めをするという典型的なコロナ切りが行われているのだ。

 こうしたケースでは、先に触れた派遣事業者団体による国への報告内容にある「雇用の安定と保護に努め」る姿勢はほとんどみられない。そして、なぜ、雇用契約を更新したうえで、他の派遣先の仕事に就いてもらうなり、それが無理であっても雇用調整助成金を利用して派遣労働者を休業させて補償を支払うという対応をしないのかについての合理的な説明もまったくなされていないという。

問われる派遣会社の雇用責任と雇い止めへの対処法

 本来、派遣会社には、ある派遣先の仕事が無くなってしまっても、別の派遣先の仕事に就いてもらうよう手配したり、一時休業させて補償を支払ったりすることで、雇用を維持・安定させるという法的責任および社会的責任がある。

 言い換えれば、派遣会社が、ある派遣先の仕事が無くなったことだけを理由に、簡単に雇い止めにしてしまうのであれば、派遣会社の存在意義はまったくないということになる。

 一方で、法律は、「派遣切り」に歯止めをかけている。そもそも、派遣先企業は、簡単には派遣会社との契約を打ち切ることができない。労働者派遣法は次のように定めている。

第二十九条の二  労働者派遣の役務の提供を受ける者は、その者の都合による労働者派遣契約の解除に当たつては、当該労働者派遣に係る派遣労働者の新たな就業の機会の確保、労働者派遣をする事業主による当該派遣労働者に対する休業手当等の支払に要する費用を確保するための当該費用の負担その他の当該派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならない。

 この条文からは、派遣先企業は、自分たちの都合で派遣会社から派遣社員を受け入れることをやめるには、

  • (1)派遣社員に新しい就業機会を確保すること
  • (2)派遣会社に派遣社員の休業手当などにかかる費用を支払うこと
  • (3)その他派遣労働者の雇用安定のための措置

が必要だということになる。

 また、労働者側が派遣会社に雇用継続を求めることもできる。労働契約法19条を根拠に、雇い止めの撤回を求めて争うこともできるのだ。これは、リーマン・ショック後の「派遣切り」の経験を踏まえて、法改正されたものである。

 労働契約法19条は、次の2つのいずれかに該当する場合であって、使用者が雇止めをすることが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」には、使用者は、従前の有期労働契約と同一の労働条件で、労働者による更新の申込みを承諾したものとみなす旨を規定している。

(1)有期労働契約が反復して更新されたことにより、期間の定めのない労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められる場合

(2)労働者が契約の更新を期待することについて合理的な理由があると認められる場合

 少し分かりにくい規定だが、要するに、ある一定の条件を満たす場合には労契法19条が適用され、雇止めが無効となり、以前と同一の労働条件で有期労働契約が更新されるということだ。

 このようにして、法律は、いわゆる非正規雇用の労働者が安易に「雇用の調整弁」として利用されてしまうことがないよう規制をかけている。なお、この法律は、有期労働契約であれば、派遣だけでなく、パート、アルバイト、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず対象となる。

【参考】「派遣切り」の多くは違法? 「本当」は厳しい派遣法を読み解く

 ぜひ、上記の条件に少しでも該当すると思われる方は、早めに労働組合や支援団体に相談し、専門家の助言を受けながら対応を考えて欲しい。

 最後に、私もメンバーになっている「生存のためのコロナ対策ネットワーク」では、7月5日に無料電話相談ホットラインを予定している。NPO、労働組合の相談員が無料で労働・生活相談を受ける。ぜひご活用いただきたい。

コロナ禍の休業・解雇・生活相談ホットライン

日時:7月5日(日)10時~20時

番号:0120-333-774(相談無料・通話無料・秘密厳守)

対象:全国の労働・生活相談を抱えている方。学生や外国人の方も対応可。

参加団体:さっぽろ青年ユニオン/仙台けやきユニオン/みやぎ青年ユニオン/日本労働評議会/首都圏青年ユニオン/全国一般東京東部労働組合/東ゼン労組/総合サポートユニオン/首都圏学生ユニオン/ブラックバイトユニオン/NPO法人POSSE外国人労働サポートセンター/名古屋ふれあいユニオン/連合福岡ユニオン/反貧困みやぎネットワーク/反貧困ネットワーク埼玉/反貧困ネットワークあいち

NPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者。

NPO法人「POSSE」代表。年間5000件以上の労働・生活相談に関わり、労働・福祉政策について研究・提言している。近著に『賃労働の系譜学 フォーディズムからデジタル封建制へ』(青土社)。その他に『ストライキ2.0』(集英社新書)、『ブラック企業』(文春新書)、『ブラックバイト』(岩波新書)、『生活保護』(ちくま新書)など多数。流行語大賞トップ10(「ブラック企業」)、大佛次郎論壇賞、日本労働社会学会奨励賞などを受賞。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学)。専門社会調査士。

今野晴貴の最近の記事