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汗や水泳に負けない日焼け止めは?…… 新UV耐水性表示の正しい見方

近藤須雅子美容エディター・コラムニスト
(写真:イメージマート)

 日差しが日に日に輝きを増し、紫外線の強さも真夏レベルになってきた。となると、日焼け止めの出番だが、今年は商品選びの基準が少し変わっているのをご存じだろうか。

 これまでは、日焼け止め効果の目安というとSPFとPAの2種の表示。SPFは激しい日焼けや日ぶくれをおこしたり皮膚ガンの要因となる紫外線B波に対する防御効果を主に表すもので、最大値SPF50+まで数値が大きいほど防御効果も高くなる。もうひとつのPAはシミやシワといった光老化の原因となる紫外線A波に対するもので、PA+からPA++++まで4段階。こちらも+の数が多いほど、防御力は高い……と、この2種だっただけだ。そこに、昨年2022年12月1日から紫外線防御効果の耐水性表示が加わって3種に。製品の特徴がより詳細に把握できるようになっているのだ。

ビーチで気になる耐水性を

世界標準の測定法で表示することに

 ウォータープルーフや耐水性を謳った日焼け止め自体はすでにいくつもあるが、いわば自己申告。「汗や水に強い」と表示されていても、それがどの程度なのか……数十分泳いだあとも効果を維持しているのか、汗をかいても落ちないという意味なのか、明確にされてこなかった。

 そこで、かねてから耐水性表示のルールづくりを進めてきた日本化粧品工業連合が、国際標準化機構(ISO)の規格をもとに自主基準の表示を策定。耐水性の高さを2段階で示すこととなったのだ。

 具体的には容器に“UV耐水性★(または☆)”、“UV耐水性★★(または☆☆)”の2段階で表示される。★と☆の意味は同じで、商品のパッケージが濃い色の場合は目立ちやすい☆を、逆にパッケージが淡い色なら★で表示といったように、使い分けられるようだ。

ビーチ等ではUV耐水性★★を。左から、ロート製薬 スキンアクア スーパーモイスチャージェルC、パラドゥ アウトドア ガードUV、資生堂 アネッサ パーフェクトUV マイルド 写真:著者撮影(下も同様)
ビーチ等ではUV耐水性★★を。左から、ロート製薬 スキンアクア スーパーモイスチャージェルC、パラドゥ アウトドア ガードUV、資生堂 アネッサ パーフェクトUV マイルド 写真:著者撮影(下も同様)

 ただし、この★を使った表示スタイルは日本における自主基準なので、海外で販売されている製品は対象外。欧米では耐水性の有無だけを表示するケースが多く、たとえ2段階とはいえ、より細かく表示しようというのは日本ならではの生真面目さと言えそうだ。PA+の表示も、アメリカではBroad Spectrumの表記というように微妙に違うので、海外旅行先で日焼け止めを購入する際はご注意を。

 また日本国内で販売されている日焼け止めも、「測定ができるラボが国内に一カ所しかなく間に合わなかった」、「昨年に印刷した容器がまだ十分ある」等といった事情で、5月現在、UV耐水性表示を実施していない製品がまだまだ多い。締め切り日(新基準表示への移行猶予期間)の2024年11月30日までに、新表示に切り替えていくようだが、しばらくは表示ナシ(自己申告)とアリが混在しそうだ。

水を浴びそうなら★ひとつ

マリンスポーツには★★が目安

 2段階の耐水性がそれぞれどの程度かというと、秒速2~5cm(小川のせせらぎくらいの流れ?)の水中に、20分間×2回入ったあと、SPF値が水浴前の50%以上維持されていれば★1つの“UV耐水性★”、同様に4回入ったあと50%以上、維持されていれば★2つの“UV耐水性★★”の表示となる。

 効果が半分残っていれば合格なんて審査がゆるい気もするが、実際は50%ぎりぎりという製品は少ないよう。耐水性を謳っている日本製の日焼け止めは、ほとんどが80%前後をキープしているという。

顔用で新表示があるのはまだ少数だ。左から時計回りに、ジェイメック プラスリストア UVローション、イヴ・サンローラン ピュアショット エアリーライト UV50、イプサ プロテクター サンシールドe
顔用で新表示があるのはまだ少数だ。左から時計回りに、ジェイメック プラスリストア UVローション、イヴ・サンローラン ピュアショット エアリーライト UV50、イプサ プロテクター サンシールドe

 実際のところ、耐水性の表示に厳密さを追求すると、水温やph(6.5~7.5の中性と決められている)や硬度、流水速度や水浴中の動き(激流で泳ぐのか、屋外プールでゆるゆる浮かんでいるのか)など、無限の条件設定が必要になり、非現実的に。まずは、川辺での水遊びや洗車など水を浴びる可能性があるときは“UV耐水性★”、ビーチやプールなどで水に入るときは“UV耐水性★★”と、ざっくり使い分けるのがリーズナブルだ。

 また耐水性の高い日焼け止めは、それだけ日焼け止めの成分が水に溶け込みにくいということでもある。ここ数年、日焼け止め成分が海水に溶け込み、サンゴ礁などの海洋生物に与える悪影響が心配されているが(異論もある)、耐水性に優れた日焼け止めを使用すれば、そうしたリスクを軽減できるというのも魅力だ。

耐水性と耐汗性は別問題

汗対策には「汗に強い」タイプを

 誤解しがちなのが、汗に対する耐性。耐水性表示はあくまでも水に対する耐性を表すもので、汗は対象外だ。汗は体内から分泌されるものなのに対し、外からの水に濡れるこの試験条件とは異なる。また汗には皮脂などアブラが含まれ、皮脂量が多ければ耐性も落ちる。メイクアップでも、ウォータープルーフタイプのアイライナーや眉ペンシルが、皮脂やファンデーションでくずれることがあるように、耐水性と耐汗性は別問題と考えた方がいいだろう。

 つまりは、「UV耐水性★★だから、ゴルフでがんがん汗をかいても大丈夫」ではないということ。これからの季節のテニスやマラソン、キャンプなども同様だ。この場合は、「耐汗性」や「汗に強い」と表示されている(こちらに統一基準はなく、メーカーによってばらつきはあるが)日焼け止めを選ぶのがベターだ。

洗車や沢遊びなど、水に入らなくても濡れる可能性があるシーンではUV耐水性★が推奨されている。濡れた部位は水滴を拭き取ってから塗り直しを。出典:日本化粧品工業会
洗車や沢遊びなど、水に入らなくても濡れる可能性があるシーンではUV耐水性★が推奨されている。濡れた部位は水滴を拭き取ってから塗り直しを。出典:日本化粧品工業会

最強の日焼け止めでも

数時間おきの塗り直しが大前提

 いずれにしても、タオルで汗や水を拭けば、多かれ少なかれ日焼け止めも拭き取ってしまう。UV耐水性★★の製品でも、水や汗を拭き取ったあとは塗り直しが必要だし、そうでなくても強い日差しの下では2、3時間おきに塗り直すのが基本。たとえSPF50+にPA++++、UV耐水性★★の太鼓判を押された最強の日焼け止めでも、やはり表示どおりの効果を得るためには使用法をきちんと守ることが大前提になる。

 そもそも、そこまで紫外線を目の敵にして遮断すべきか否か(「紫外線とのつきあいが下手すぎた? 防ぎすぎも日焼けしすぎもカラダに悪い」を、ご参照ください)という問題もあるが、ハワイなど南の島のバカンスやアウトドアスポーツは久しぶりという方も多いはず。日焼け対策の勘が鈍って思わぬダメージを受けた、などということがないよう、ぜひ日焼け予防のリマインドを。

美容エディター・コラムニスト

美容・ヘルスケアを中心に、容姿・モード・肉体をめぐるモノやコトがテーマです。『VOCE』(講談社)、『Precious』(小学館)等、女性誌を中心に活動。主な著書に、『9割の人が間違っている化粧品「効きめ」の真実』、『プチ整形の真実』(講談社)等。

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