4月12日、甲子園で行われた阪神対広島の2回戦、2対2の6回表にこんなシーンがあった。

先頭の4番・松山が二塁打で出塁すると広島ベンチは代走に堂林を送る。無死二塁から5番・天谷の放った右中間を破ろうかという鋭い打球をセンター・大和がスーパーキャッチ。二塁と三塁の中間辺りまで出ていた堂林は捕球を確認すると二塁ベースに戻った。一死二塁となりプレー再開、打席には6番・田中が入る。

この走塁について完全に堂林の判断ミスだと教えてくれたのはWBCでも三塁コーチを任された阪神の高代コーチ。「無死二塁と一死二塁では意味合いが全然違うんやで。一死二塁で打球が抜けたら絶対還って来なあかん。でも無死二塁なら三塁まで行けばまた無死での攻撃が出来るから、二塁寄りのリードしかとってなくて仮に三塁ストップになったとしてもそれはそれでオッケー」なのだという。無死二塁から右中間を破る二塁打で生還出来ないのはもったいないような気もするが、ランナーを三塁に置いて無死での攻撃が続けられるのだから得点出来る確率はかなり高い。守る側からしてみれば無死二、三塁も1点取られての無死二塁もどちらも2失点は仕方ないと考える場面だ。また、打球が捕られてもタッチアップを成功させ一死三塁としておけば得点のパターンは豊富にある。

一方、一死二塁ならタッチアップを成功させ二死三塁としても次打者が凡退すれば得点は奪えない。守備側も一死三塁なら失点を覚悟するが、二死三塁なら絶対に防ごうと考える。今回の場面は二塁打性の打球だったが仮に単打だった場合も、一死一、三塁ではやはり守備側は併殺を狙い無失点で切り抜けようと考える。

つまり、一死二塁からはタッチアップよりも生還することが求められ、無死二塁では確実に三塁を陥れることが重要となる。そのためどちらもハーフウェイのリードで打球を確認することには違いないが、その位置はアウトカウントによって大きく異なる。一死二塁では打球が地面についてからスタートしても生還出来るところまで出る必要があり、無死二塁では捕球後、一旦二塁に帰塁してからでも三塁に到達出来る小さなリードが正解。

試合は阪神ファンにとっては8回に飛び出した連敗を止める鳥谷のツーランが全てであり、広島ファンにとってはエラーや盗塁失敗が相次いでの敗戦だったためほとんどの人がミスの中の1つとしてしか見ていなかったかもしれない。ただ、あの場面での堂林の走塁は、試合の流れを左右する大きなプレー。野球の奥深さを考えさせられる一幕だった。