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ヒットを打ったぐらいじゃ成績が下がる?女子プロ野球・三浦伊織の打棒

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

バリー・ボンズを超える驚異のOPS

創設から5年目のシーズンを迎えた女子プロ野球にとんでもない打撃成績を残している選手がいる。1年目から主力として活躍し今夏に行われるワールドカップの日本代表候補にも選ばれた三浦伊織だ。5月3日の試合開始前の時点で

打率.556

出塁率.600

長打率1.000

女子プロ野球は7イニング制で行われるため1試合での打席数は3か4がほとんど。出塁率.600とはアウトになるのが2試合で3度という割合だ。

長打率とは長打を打つ確率ではなく、1打数当たりいくつの塁を獲得したかを示した数値。全打席安打なら1.000、全打席本塁打なら4.000となる。例えば

打者A:安打、安打、三振、三振

打者B:二塁打、三振、三振、三振

はどちらも長打率は.500で同じになる。

そして、出塁率と長打率を足した指標がOPS(On-base Plus Slugging)。これはセイバーメトリクスで最も有名な指標の一つで、計算が簡単な上に得点との相関関係が打率よりも高い。打者の“攻撃力”を表す数字としてメジャーリーグでは打率よりもOPSが用いられることの方が多い。OPSは.700前後が平均とされ.800を超えると一流、.900を超えるとリーグを代表する打者、1.000を超えるとMVP級というのが目安。

60本塁打を放った昨季のバレンティンで1.234

日本記録は王貞治の1.293(1974年)

メジャーリーグでの最高記録はバリー・ボンズの1.422(2004年)

三浦のOPSは1.600だからすでにに驚異的な数字だが、5月3日の試合では更に常識を超える活躍を見せた。

シングルヒットでは成績が下がる

この日の試合で三浦は第1打席で三塁打を放ち長打率を1.105とする。1.000を上回るということは1打数でワンベース以上の塁を獲得しているということ。つまり、シングルヒットでは長打率が下がることを意味する。実際、三浦は第2打席から第4打席まで全て安打を放ち、トータル4打数4安打で.556だった打率を.636まで上げた。もちろん、出塁率やOPSの打撃部門でも数字を伸ばしたが、長打率だけは1.105→1.100→1.095→1.091と安打を放つ度に下がっている。三浦が長打率を上げるためには二塁打以上が必要。自ら上げ過ぎたハードルはもはや普通の安打では成績を維持することすら出来ないのだ。

三浦の現在のOPSは1.758。これはセリーグならゴメス(阪神)と坂本(巨人)、パリーグなら長谷川(ソフトバンク)と井口(ロッテ)の合計値とほぼ同じ。そのルックスからは想像も出来ないが(プロフィールはこちら)、NPB打撃10傑の常連2人分に匹敵する攻撃力を持つ。写真からもわかる通りパワー溢れるいかついタイプではなく、巧いバットコントロールで外野手の間を抜いたり、体をきれいに回転させた打球が外野手の頭を越えるタイプ。

今夏に宮崎で行われる第6回IBAF女子野球ワールドカップでは、世界の好投手を相手にその打撃センスを披露してくれるだろう。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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