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近畿勢対決となったセンバツ決勝、強力打線によるシーソーゲームか

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

長打力と確実性を併せ持つ打者多数

強打あり、手堅い攻めありで決勝まで勝ち上がった履正社と龍谷大平安。振りの鋭さと打球の強さは周知の事実だが、その打撃力を示す数字もしっかり残っている。

OPS(On-base Plus Slugging)はセイバーメトリクスで最も有名な指標の一つ。計算方法は(出塁率+長打率)と簡単な上に得点との相関関係が打率よりも高い。打者の“攻撃力”を表す数字としてメジャーリーグでは打率よりもOPSが用いられることの方が多い。

野球は相手より1点でも多く得点したチームの勝ちであり、攻撃の目的は得点を奪うこと。そのためアウトにならない四球に価値を見出し、よりホームに近づける長打にも着目する。OPSは.700前後が平均とされ.800を超えると一流、.900を超えるとリーグを代表する打者、1.000を超えるとMVP級とされている。

決勝に残った両チームの野手陣の成績は

履正社

打率   OPS

井上 .062   .375

辻 .333    1.217

吉田 .444  1.222

中山 .214  .548

西村 .625   1.339

八田 .364  1.079

絹田 .375  .882

立石 .200  .685

龍谷大平安

打率   OPS

徳本 .294   .957

大谷 .412  1.150

姫野 .214   .779

河合 .461  1.093

中口 .385   .760

常   .500   1.325

石川 .400  1.204

高橋佑 .273  .710

MVP級の打者がズラリと並んでいる。ちなみに60本塁打を放った昨季のヤクルト・バレンティンのOPSが1.234。どちらも爆発力ある打者が2番に座り(履正社は準決勝で1、2番を入れ替えたが)、OPS1.300を超える打者が上位と下位をつなぐ打順で存在感を示す。高校野球に限らず主力選手は1、3、4番に置かれることが多いためチームトップの成績はこの打順の選手が残すことが多い。そうではないということは、どちらも主役になれる選手がたくさんいるということだ。

投手力では履正社にやや分がある

WHIP(Wallks plus Hits per Inning Pithed)は1イニング当たり何人のランナーを出すかを表した数字で(被安打+与四球)÷投球回で計算する。死球や振り逃げ、失策などによる出塁は含まない。

防御率が投球の「結果」を示すのに対し、WHIPは投球の「中身」を示す。

1を切ればリーグを代表する投手

1.2を切ればチームを代表する投手

1.4を超えると安定感に欠ける投手

というのが目安。

K/BBは(奪三振÷与四球)で計算し四球1つあたり何個の三振を奪ったかを表す指標。数値が高いほど制球と奪三振能力に優れた“完成度の高い投手”とされ、3.5を超えれば優秀とされている。

履正社

WHIP   K/BB

溝田 1.27   2

永谷 0.93   8.5

龍谷大平安

WHIP   K/BB

高橋奎 1.16   2

中田 1.11   2.5

元氏 1.82   1.2

WHIP、K/BB共に履正社・永谷の成績が目を引く。威力あるストレートで押すパワーピッチングは間違いなく今大会ナンバーワン。イニング数を上回る三振を奪いながら、速球派投手にありがちな四球から自滅という雰囲気も感じられない。

龍谷大平安は主戦・高橋奎が準決勝で完投したため、先発するにしろリリーフ待機にしろ背番号1を背負う中田の投球に期待したい。

大会を締めくくるに相応しい名門対決となったが、意外にもセンバツで決勝に進んだのはどちらもこれが初めて。初進出で初優勝を遂げるのはどちらのチームか。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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