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森保ジャパンの危機。中国戦、救世主となるのは誰か?

小宮良之スポーツライター・小説家
オマーン戦、途中出場した古橋亨梧(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

中国には負けられない

 カタールワールドカップアジア最終予選、中国は第一戦でオーストラリアに0-3と完敗している。

<歯が立たない>

 そのレベルの負け方だった。

 中国は戦闘意欲、フィジカルインテンシティ、スピードを武器にオーストラリアに挑んでいた。立ち上がり、身体能力には優れた選手たちが勢いよくボールホルダーに食らいつき、相手にペースを与えなかった。まさに、中国らしさが出ていた。

 しかし、たった10分で化けの皮ははがれていった。

 技術、戦術、どちらも世界標準に達していない。各選手のコントロール&キックは凡庸で、ろくにボールを回せなかった。攻撃は単発で、幅や深みを作ることはなく、コンビネーションはほとんど見られない。また、組織として守れず、立ち位置が悪く、切り替えやカバーに対する反応も鈍かった。オマーンと比べても、各ラインの連動が乏しく、いたずらにスペースを与えていた。

 4-1-4-1で1トップはかつてアジアチャンピオンズリーグを席巻したブラジル人FWエウケソンが担当していたが、動きの量が少なく、オーストラリアのセンターバックを相手に何もできなかった。やや、ぜい肉もついていた。頼みの綱もその程度だ。

 9月7日、森保ジャパンは中国と対戦する。オマーンにホームで0-1と敗れた後、連敗など許されない。W杯出場に黄信号が灯るだけに――。万に一つ、中国に敗れることなどあってはならない。

日本は本来の力を出せるか

 日本は、本来の力を出すことだけを考えるべきだろう。それだけで、負ける相手ではない。一人一人の力量が違い過ぎるのだ。

 おそらく、オーストラリア戦と同じで中国は最初の10分でプレー強度を上げて入ってくるだろう。ロングボールを多用し、もしくはセットプレーを奪い、高さ勝負をしてくる可能性もある。しかし動きは戦術的に規則的ではなく、無駄が多いために消耗し、90分間、精神的にも続くものではない。

 最初の波を凌げれば、自然とペースを取れる。ただ、日本はオマーン戦ではハイプレスを受け、ボールを失い、クリアまで混乱している様子があった。不用意なファウルに注意しながら、粘り強くプレーすることだ。

 オーストラリア戦で、中国は右サイドにエース、ウー・レイが陣取っていた。ボールを呼び込むスピードは瞠るものがあった。序盤、それでシュートまで持ち込むなど、屈強な体で初速に優れ、初見でマークした場合、手こずるストライカーだろう。

 しかし、ウーはプレーの幅が広くはない。老練なディフェンスを相手にすると、一本調子で簡単に読まれる。リーガエスパニョーラでポジションを奪い切れていないのも、フィジカル、スピードに頼って、動きに工夫がなく、連係する技術が十分ではないことが理由だ。

 日本は長友佑都がマッチアップすることになるか。長友は相手に持ち味を出させない、したたかな守りができる。体の使い方、ポジショニングで封じ込められるだろう。

 唯一、気がかりはコンディションだが…。

中国戦でカギとなる選手は…

 中国戦、日本の鍵はコンディションかもしれない。

 オマーン戦、それは大きな敗因の一つだった。

 例えば酒井宏樹は少なくとも過去4年では見たこともない低調なパフォーマンスだった。試合後、代表離脱を発表。欧州シーズン、東京五輪、Jリーグ、そして代表の連戦で、休養が必要なほどに消耗していた。同じことが、東京五輪を戦った遠藤航にも当てはまる。久保建英、堂安律など東京五輪の主力アタッカーが、オマーン戦の先発を外れたのも、疲れが残っているというジャッジだったはずだ。

 その点で、中国戦は実力以上にコンディションを考慮した起用にすべきかもしれない。

 最も期待したいのは、古橋亨梧だ。

 古橋は、ヴィッセル神戸でダビド・ビジャ、アンドレス・イニエスタとプレーすることで劇的に変わった。動き出しの質が上がり、シュートのインパクトの技術も向上し、持ち前のスピードが脅威になっている。そして移籍先のスコットランド、セルティックでゴールを量産。心身ともに状態が良いのは明らかで、彼が最大限に生きるポジション、組み合わせにするべきだろう。

 もっと端的に言えば、古橋はワントップにせよ、ツートップにせよ、ストライカーとして勝負させるべきだ。

 裏を取る選手に対し、中国は対応が後手に回る。オーストラリア戦も無残だった。ラインコントロールが拙く、古橋の裏への動きは強大なダメージとなるだろう。

敗れた場合、森保監督の進退問題に

 古橋の背後では、久保、鎌田大地、伊東純也は、古橋の背後でゴールを生み出すプレーが期待できる。

 中国はアンカーの選手が機能していない。ポジショニングや読みが悪く、背後も脇もがら空きになる傾向がある。ディフェンスラインの前に入る、横切るような動きで混乱を与えられる。

 とりわけ、左利きの久保が右サイドから中央にカットインするプレーは決め手となり得る。

 オマーン戦は、ボランチの二人が不調だった。例えば柴崎岳は失点シーンで相手を挟み込むべきところで強度が弱く突破され、その後のクロスの対応も甘く、守備の強度が低すぎる。攻撃で決定的な貢献ができないと厳しい。遠藤も気持ちばかりが逸り、ベストパフォーマンスには程遠かった。個人的には橋本拳人と田中碧のコンビを推すが、中国相手なら誰が出ても言い訳はできない。

 ディフェンスラインは、たとえ消耗があっても吉田、長友は外せないだろう(特に衰えを見せつつある長友の代わりが全くいないのは問題で)。また、オマーン戦では植田直通のミスが目に付き、合流したばかりの冨安健洋も欠かせない。右サイドバックは酒井に代わる選手はいないが、室屋成は久保との連係がポジティブな要素だ。

 森保一監督は、中国を相手に戦い切れる一体感を作れるか。選手も、オマーン戦の失態から反発力を見せる必要があるだろう。繰り返すが、実力的には格下である。戦術うんぬんは、それほど大きな問題ではない。集中し、高い士気で挑むことができたら、負けることはない敵だ。

 それだけに、もし敗れるようなら――。指揮官の責任問題の端緒となる。森保ジャパンにとって、分水嶺となる一戦だ。

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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