18人が発表

 6月22日、東京五輪に挑むU―24日本代表の大会メンバー18人が発表された。サプライズと言えるほどの選出はなかった。

GK

谷晃生

大迫敬介

DF

酒井宏樹

冨安健洋

吉田麻也

板倉滉

旗手怜央

中山雄太

橋岡大樹

MF

遠藤航

田中碧

三好康児

堂安律

久保建英

相馬勇紀

三笘薫

FW

上田綺世

前田大然

 オーバーエイジ(OA)の吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航という3人を含めて、史上最高の陣容が揃った。とりわけ、守備陣の充実ぶりは目覚ましい。セリエAでプレーする冨安健洋も含め、各国強豪と比較しても鉄壁の布陣だ。

 守りが安定したことで、攻撃陣も凄みを増している。

 久保建英、堂安律のコンビネーションは、相手を幻惑。どちらも個の力でゴールを奪える。前線の上田綺世との連係もスムースで、かなりの威力を発揮するだろう。

 では、メダルの可能性は?

メダルを狙える四つの理由

 結論から言って、十分にあるだろう。日本が「メダル戦線を勝ち抜ける」と言える理由は四つだ。

 一つは自国開催だけに十分な準備をし、ベストメンバーを組める点だろう。日本は24歳以下の選手も、OAの選手も、最高の人材を揃えられた。例えば前回のリオ五輪では、チャンピオンズリーグ予選に出場していた久保裕也の大会登録が直前で不可能になっている。OAに関しても、Jリーグのクラブとの交渉で3人を選んだ格好で、海外組は呼べなかった。

 五輪はFIFA主催ではないだけに、クラブには選手派遣義務がなく、拒否できる。日本では五輪までがユース年代だが、欧州では21歳以下まで、それ以上の栄光は所属クラブでのタイトルやワールドカップが目標になる。そもそも欧州の有力選手は五輪にプライオリティを持たず、プレシーズンのコンディション挑戦を優先させるほどだ。

 今回の東京五輪は、欧州選手権、南米選手権とも重なっているだけに、欧州や南米の代表でベストメンバーを揃えることは事実上、不可能だろう。

 南米の代表はメダルへ強い意欲を見せるが、欧州クラブの貸し渋りに遭っている。例えば今回のブラジル代表もOAには38歳になるダニエウ・アウベスを招集する苦肉の策で、ネイマールなどは招集できなかった。国内組が多く、ベストには程遠いメンバーだ。 

地の利とオーバーエイジ

 二つ目は、日本には地の利がある。

 対戦相手は時差や長旅の疲れだけでなく、今回はコロナ禍も重なって、コンディション調整は極めて難しい。気候や雰囲気に慣れるのにも時間がかかり、短期決戦では命取りになる。3月に日本にやってきたアルゼンチンは初戦こそ体が動いていたが、2戦目は明らかに重かった。6月のガーナは目を覆うようなプレーで(日本に6-0と大敗)、コンディションの悪さか、単に実力の低さだったのか。

 三つ目はすでに書いたが、OAによって守備の安定が増した点にある。

 吉田はプレミアリーグ、セリエAを生き抜いた歴戦の強者で、したたかな守りを見せる。攻めの一歩としても間髪入れずにボールをつけ、プレースピードを上げられるし、機を見て長いボールでチャンスを作り出せる。セットプレーの高さは武器だが、それ以上に「鬼のように見える」とチームメイトが言うように常に周りを叱咤し、リーダーとしての風格がある。

 酒井は右サイドで厚みを与えるだけでなく、敵陣深くまで攻め込み、決定的な打撃を与えられる。ガーナ戦のオウンゴールを誘ったクロスは象徴的だろう。また、フランスリーグのマルセイユで定位置を確保してきただけに、試合巧者として流れを読める。ジャマイカ戦では中断後のスローインのリスタートで久保を走らせ、ゴールにつなげていた。大会ベストイレブン候補だ。

 遠藤は今シーズン、ブンデスリーガで1,2を争うMFとして名を馳せている。フル代表との試合では、途中出場でバタつくチームをぴたりと落ち着かせた。適切なポジショニングと強度の高いディフェンスで柱となれる。ジャマイカ戦は自身のインターセプトから攻め上がり、ゴールも決めた。まさに攻守の両輪だ。

 これに冨安が加わったバックラインは、難攻不落を誇る。ボランチの田中碧も非凡さを感じさせ、ボールを運び、奪い、高さもあって、弱点がない。遠藤との連係で、防御線を敷ける。チーム全体の守備意識も高いし、複数のポジションを兼務できるディフェンシブな選手も揃った。

 あえて言えば、左サイドバックとGKはやや不安が残る。左サイドバックは、いわゆる本職がいない。レギュラーGK候補の谷晃生はガーナ、ジャマイカ戦とセットプレーでふらふらと出て、ボールに触れない場面があった。高いレベルでは失点に値するだけに…。

攻撃陣は爆発するか

 最後の四つ目は、攻撃陣の充実だろう。守備が安定し、遺憾なく力を発揮できる。

 久保、堂安は五輪出場メンバーの中ではトップレベルだ。

 金メダル候補筆頭で力を入れているブラジルは、久保と同じレアル・マドリードがパスを所有するロドリゴや売り出し中のドリブラー、ヴィニシウス・ジュニオールなどを選出できていない。代わりに選んだのはバルサで低調でロシアのゼニトに渡ったマウコムだが、わずか3得点。また、アヤックスのアントニーはオランダリーグで9得点して存在を示すも、いわゆる「怪物級」ではない。

 久保はスペインのマジョルカで目覚ましい活躍を遂げ、今シーズンはビジャレアル、ヘタフェで足踏みしたが、残留を決めるゴールで帳尻を合わせている。堂安はオランダでの活躍(デビューシーズンの2017-18シーズンで9得点)でドイツに渡った。今シーズンは定位置を確保し、残留に大きく貢献し、チームトップの5得点を記録している。

 ブラジルより「優れている」と断言できなくても、「劣ってはいない」と言える陣容だ。

 また、1トップの上田は世界の強豪とも渡り合えるポテンシャルを感じさせる。試合中でもプレーを修正し、相手の裏を取れる。動きの質は世界基準で、腰が強く、容易に倒れない。ガーナ戦、久保へのアシストは見事だった。シュートの質も高く、キックが速く、重く、コースを狙える。ヘディングも瞠目の跳躍を見せるが、それ以上にマークを外す動きに長ける。プレー理解に優れ、大会後はフル代表のストライカーになるはずだ。

 最後に、三笘薫は切り札になり得る。国際的名声がないに等しい選手だけに、おっとり刀で挑んできたら、すべて討ち取れる。ドリブルの切れ味はあるし、ゴールにも直結。ジャマイカ戦、上田に出したスルーパスも白眉だった。

メダル獲得は至上命令

 ワールドカップに比べたら、五輪のレベルは低い。出場国枠がアジア、アフリカと欧州が同じで、南米が少ないなど力関係を考えればあり得ないだろう。「波乱」は起きやすいのだ。

 金メダルも不可能ではない。

 グループリーグ、日本は南アフリカ、メキシコ、フランスと対戦する。戦力的に考えて、南アフリカには必勝の構えとなるだろう。メキシコは曲者が多いが、国内組中心で臆することはない。フランスは世界の強豪だが、有力選手は多くがすでに国外のクラブで招集は難しく、国内の有力クラブにも袖を振られ、2軍に近い編成になるはずで…。

 決勝リーグ進出の2位以内は十分に射程内だ。

 1位でも2位でも、準々決勝はA組との対戦になるが分は悪くない。ニュージーランド、韓国、ルーマニア、ホンジュラスはどこであれ、勝算は立つ。準決勝からは運も大きく作用するし、できればブラジル、アルゼンチンとの対戦は最後まで避けたいが…。

 2019年欧州U―21選手権優勝のスペインは「東京五輪にベストメンバーをそろえる」と公言している。マルコ・アセンシオ、ファビアン・ルイスをOAで採用し、他にスペイン代表でEUROを戦っているロドリ、ペドリ、ダニ・オルモ、オジャルサバル、パウ・トーレス、フェラン・トーレスも招集すると言う。実現したら太刀打ちできない戦力になるが、俄かには信じられない。来週28日にメンバー発表となるが…。

 いずれにせよ、日本はメダルに王手となる準決勝まで突き進むのみだ。