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2021年を彩るJリーガー。17歳サイドバックの「最低でも日本代表」と言える非凡さ。

小宮良之スポーツライター・小説家
サガン鳥栖の高校生Jリーガー、中野伸哉(写真:森田直樹/アフロスポーツ)

 2020年は、人々の価値観や生活様式が一変することになった。スポーツもその余波を食らう形になっている。Jリーグでは、無観客から限定して客を入れられるようになったが、行動は制限されたままだ。

 そして2021年も、世界はまだしばらくコロナ禍に苦しむことになるだろう。

 しかし一つの時代の終わりを告げるように、次の時代の到来を感じさせるようなサッカー選手たちが台頭しつつある。2021年、Jリーグで注目すべき選手たちの名前を挙げたい。その前編として、GKとDFの4人を――。

GK

高丘陽平(24歳、横浜F・マリノス)

 2020年のJリーグで、最も地殻変動が起こったポジションと言えるだろう。

 高丘もシーズン中に、サガン鳥栖から横浜F・マリノスへ移籍している。

 すぐに目を引くのは、卓抜としたキック&コントロールだろう。ビルドアップでは、相手にはめられたかに見えても、鋭い球筋のボールを真ん中に打ち込める。その技術と度胸は群を抜いている。アンジェ・ポステコグルー監督が信奉する超攻撃的なサッカーの車輪を回すGKとして、最適のGKと言える。

 いわゆる「リベロGK」の典型にも見えるが、キックは彼のセールスポイントの一つに過ぎない。

 高丘の能力の高さはシューターに対し、一気に間合いを詰められる点にある。下半身から上半身の体のコーディネーションに優れ、爆発的な瞬発力でコースを消す。体勢を戻すのも早く、連続したセービングも少なくない。足さばきも整然としたもので、基礎的なゴールキーピングの賜物と言えるか。

 マリノスは攻撃に傾倒するあまり、守備組織に綻びが多いだけに、高丘がディフェンス全体と信頼関係を構築することによって、攻めでも守りでもリーダーシップをとることができれば――。2021年の飛躍が期待される守護神だ。

DF

中村拓海(19歳、FC東京)

 2019年、J3リーグ最終節で初めて見たが、中村はすでに傑出したセンスを見せていた。右サイドバックとして、洗練されてはいなかったが、一人のサッカー選手としての原石の輝きがあった。

<相手選手の逆を取る>

 その点で中村はタイミングが図抜けていた。ボールをどのように受け、置き、弾くべきか。その技術に長けるだけでなく、同時にプレーを読み、準備動作ができるし、対応も早い。

 2020年は、J1でトップチームの試合に出場するようになったが、それは必然だろう。

 10月の横浜FC戦は後半38分に交代出場すると、一人違う境地に立っていた。

 交代直後、中村は自陣、右サイドで相手ディフェンスに囲まれながらターンし、確実に前にボールをつなげている。そのワンプレーだけで、技術、ビジョン、胆力を証明。そしてそのまま攻め上がり、右サイドからクロスを送り、跳ね返りを再び味方が拾うと、巧妙に裏に抜けて受け、再びクロス。得点につながらなかったが、際立ったプレーセンスを見せた。

 右サイドの戦局を支配することで、ゲーム全体を有利にできる選手だ。

中野伸哉(17歳、サガン鳥栖)

 2020年のサッカー界、ルーキーとしては一番の衝撃だった。

 中野は左サイドバックとして、「世界」の入り口にいる。そのサッカーセンスは非凡。Jリーグの歴代選手でも屈指だろう。例えば鳥栖で言うなら、鎌田大地(フランクフルト)以来の才能だ。

https://news.yahoo.co.jp/byline/komiyayoshiyuki/20150710-00046084/

「とにかくスピードがある」

 鳥栖のチームメイトたちは口をそろえる。初速が早く、ステップも細かい。守るのも、攻めるのも、それだけでアドバンテージだ。

 もっとも、単純な速さだけではない。初動が早いのは、予測力にある。半歩だけで違う風景になるのがトップレベルのサッカーだが、彼は常にプレーを読み、適切なポジションを取れる。

 例えば最終節、大分トリニータ戦でも4,5度とインターセプトに成功する一方、ボールを引き出す動きだけでマークに来た相手を置き去りにし、攻撃に転じていた。敵味方の動きを読み、スペースを認知し、何よりタイミングを心得ている。間合いが抜群で、居合斬りのように一瞬で相手と入れ替われるのが特徴だ。

 こうしたセンスは、トレーニングで鍛えるのは限界がある。中野はそれを天分のように持ち合わせている。左利きでありながら、右足も同じように蹴れるというのも、大きな利点と言える。相手は的を絞れない。自ずと、プレーの選択肢が豊富になるのだ。

 2021年、中野がJリーグを代表する左サイドバックになっても不思議ではない。コロナ禍で不透明だが、東京五輪のメンバー入りも不可能ではないし、代表も遠くはないだろう。最低でも代表になれる器で、その飛躍は日本サッカーの希望だ。

瀬古歩夢(20歳、セレッソ大阪)

 左のセンターバックができる貴重な人材だ。

 ロティーナ・セレッソの守備の確立で、恩恵を受けた一人だろう。メンタル面では若さを露呈することはあるが、マテイ・ヨニッチとコンビを組むことで、成長を遂げつつある。ヘディングなどコンタクトプレーに強さを見せるだけでなく、逆サイドへプレスを回避するパスを打ち込めるなど、スケールの大きさを感じさせる。

 2020年は、ルヴァンカップのニューヒーロー賞、Jリーグのベストヤングプレーヤー賞を受賞。ダブルでのタイトルとなったが、それに値するプレーだったと言える。

 2021年はロティーナ監督がチームを去り、ブラジル人クルピ監督が新たに就任。守備を出発点に攻撃を好転させていた戦い方は、「自由」という名の戦術への変化を余儀なくされる。瀬古だけでなく、ロティーナのサッカーの中で成長を遂げてきた選手は多く、どんな目が出るのか。賽は投げられた。

(MF、FWに続く)

スポーツライター・小説家

1972年、横浜生まれ。大学卒業後にスペインのバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。競技者と心を通わすインタビューに定評がある。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)『アンチ・ドロップアウト』(集英社)。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。他にTBS『情熱大陸』テレビ東京『フットブレイン』TOKYO FM『Athelete Beat』『クロノス』NHK『スポーツ大陸』『サンデースポーツ』で特集企画、出演。「JFA100周年感謝表彰」を受賞。

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