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メタとグーグルが増収達成、ネット広告復調 両社ともに約1年半ぶり最終増益

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

米メタの2023年4〜6月期決算は、売上高が前年同期比11%増の319億9900万ドル(約4兆4900億円)で、6四半期ぶりの2桁増収になった。

メタ、2四半期連続増収 7四半期ぶり最終増益

22年(昨年)は景気減速の影響で、主力のインターネット広告事業が振るわなかった。22年は1〜3月期は増収だったが、その後の3四半期はいずれも減収だった。しかし、23年に入って2四半期連続の増収を達成した。また、23年4〜6月期の純利益は同16%増の77億8800万ドル(約1兆900億円)で、7四半期ぶりに最終増益となった。

メタの売上高は98%をネット広告が占める。その23年4〜6月期の金額は、314億9800万ドル(約4兆4200億円)で、前年同期から12%増加した。

メタのグループ全体のサービスの23年6月における日間アクティブ利用者数は30億7000万人で、前年同月から7%増えた。SNS(交流サイト)「Facebook(フェイスブック)」の日間アクティブ利用者数は20億6000万人となり、同5%増加した。

大規模レイオフでコスト削減も

一方で、23年6月末時点のメタの従業員数は約7万1500人となり、1年前から14%減った。同社は、23年3月、約1万人の従業員を追加削減すると発表していた。22年11月には当時の従業員の約13%に当たる1万1000人超のレイオフ(一時解雇)を明らかにしており、2回目の大規模解雇に着手した。同社によれば、23年のレイオフ計画ではすでに約半数を削減したという。

メタの1株利益は2.98ドル(前年同期は2.46ドル)となり、市場予想(2.91ドル)を上回った。23年7〜9月期の売上高は320億〜345億ドル(約4兆4900億〜4兆8400億円)を見込んでいる。インターネット広告の復調を受け、メタの株価は7月26日の米株式市場の時間外取引で一時終値から7%超上昇した。

アルファベット、6四半期ぶりに最終増益

米グーグルの持ち株会社、米アルファベットの決算内容も良かった。同社の23年4〜6月期決算は、売上高が前年同期比7%増の746億400万ドル(約10兆5100億円)だった。純利益は同15%増の183億6800万ドル(約2兆5900億円)で、6四半期ぶりに最終増益となった。減少が続いていたインターネット広告事業がプラスに転じ、クラウドサービス事業も大幅増収となった。

アルファベットでは、全売上高の78%をネット広告収入が占める。その23年4〜6月期の金額は、581億4300万ドル(約8兆1900億円)。前年同期から3%増加し、3四半期ぶりにプラスに転じた。

このうち7割強を占める検索連動広告の売上高は426億2800万ドル(約6兆80億円)で、同5%増加した。動画共有サービス「YouTube(ユーチューブ)」の売上高は、同4%増の76億6500万ドル(約1兆800億円)で、22年4〜6月期以来の増収となった。

同社がネット広告に次ぐ事業として力を入れるクラウドコンピューティングの売上高は80億3100万ドル(約1兆1300億円)。前年同期比28%増と、大幅増収だった。

アルファベットも大規模リストラ

一方、アルファベットの23年6月末時点の従業員数は約18万1800人で、3カ月前から8000人近く減った。23年4〜6月期は、これら整理解雇(リストラ)などに伴い6900万ドル(約97億円)の費用を計上した。

アルファベットも大規模なリストラに着手した。同社は23年1月、グループ全体で約1万2000人を削減すると発表。対象になったのは全従業員の約6%。スンダー・ピチャイCEOは、「製品や事業、役職、地域を問わず、全社を横断するものになる」と説明していた。

アルファベットの1株利益は1.44ドルで、売上高とともに市場予想を上回った。この決算を受けて、同社の株価は7月25日の米株式市場の時間外取引で一時終値から6%超上昇した。

(1ドル=140.4〜140.94円で換算)

筆者からの補足コメント:

メタについては、同社が次世代コンピューター基盤として投資を続けているメタバース関連事業「Reality Labs」が振るわない状況が続いています。例えば、2023年4〜6月期のReality Labs事業の売上高は2億7600万ドル(約388億円)で前年同期から39%減少しました。営業損失は37億3900万ドル(約5250億円)で、赤字額は拡大しました(前年同期は28億600万ドルの赤字)。一方、アルファベットのリストラ策については、採用部門や、非中核事業とみなされるプロジェクトなどの一部部門はより深刻な影響を受けたとみられます。影響は、副社長レベルや、クラウドコンピューティング、スタートアップを構築するインキュベーター制度「エリア120」の従業員にまで及ぶと関係者は話していました。

  • (本コラム記事は「JBpress」2023年8月1日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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