米アマゾン・ドット・コムが倉庫従業員のマスク着用義務をなくすと、米ウォール・ストリート・ジャーナルなどが報じた。すでに義務化ルールを撤廃しており、同時に新型コロナ関連の病気有給休暇の適用範囲も見直した。

マスク着用義務を撤廃、「オミクロン減少で」

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アマゾンでは、変異型オミクロン株の急激な感染拡大を受け、2021年12月に全従業員を対象にマスク着用を義務付けた。それ以前はワクチンを接種していない人のみを対象にしていた。

アマゾンは今回、社員宛のメモで「この数週間、全米で新規感染者数が急速に減少している。全国的にワクチン接種率も上昇しており、私たちが通常の活動に戻れる明るい兆しが見えてきた」と述べた。

アマゾンの今回の措置は、米国各州の方針転換に合わせた形で決定された。ニューヨーク州やイリノイ州、マサチューセッツ州などは、屋内でのマスクの着用義務や、イベント参加時などのワクチン接種証明の提示義務を22年3月末までに撤廃すると明らかにしている。

ただし、地下鉄やバスなどの公共交通機関や医療現場、学校などでは引き続きマスクの着用が義務付けられる。これに対し、米疾病対策センター(CDC)は引き続き屋内での着用を推奨している。

ワクチン接種を事実上義務化

アマゾンが21年10〜12月期の決算発表で公表した21年12月末時点の世界従業員数は160万8000人。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、うち約100万人が米国従業員で、その大半が米国に数百カ所ある物流施設で働いている。

米マイクロソフトや米メタ(旧フェイスブック)などの一部の米企業は、すべての従業員に対しワクチン接種を義務付けているが、アマゾンではワクチンを義務化せず、代わりに少額のボーナスを支給するなどして接種を促してきた。

しかし、今回の方針転換でアマゾンは、事実上のワクチン接種義務化にかじを切った。同社はこれまで、全従業員を対象に新型コロナ関連の病気有給休暇を付与していた。だが、今後はその対象からワクチン未接種者を除外する。

物流混乱やコスト増の回避が背景に

その背景には、数十万人の倉庫従業員に依存する物流業務の混乱を回避する目的があるようだ。アマゾンは、物流施設などで働く時間給従業員と、技術系などのホワイトカラー従業員の両方を雇用しているという点で他の企業とは大きく異なるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じている。

こうした中、コロナ禍における人手不足や物流停滞に対処するための費用が増大している。例えば同社は、21年9月に米国の物流拠点で新たに12万5000人の従業員を採用すると明らかにし、最低時給の平均を約15ドルから18ドル超(約2100円)に引き上げた。

21年10月には年末商戦に向けて米国で15万人の季節労働者を雇用すると発表。初任時の平均時給を18ドルとし、勤務時間帯によって3ドル加算し、契約時に一時金3000ドル(約35万7000円)を支払った。

21年10月下旬には、年末の繁忙期に向けて物流体制を強化。貨物船や航空貨物機などの輸送資源、物流施設の人員を拡充した。また、自社物流ネットワーク内で入港地を5割増やしたり、海上輸送業者から物流倉庫を追加確保したりしてコンテナ処理能力を2倍にした。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、アマゾンが21年10〜12月期に、世界的なサプライチェーン混乱や激化する労働市場への対応で約40億ドル(約4800億円)を支出した、と報じている。

こうして同社のコストは膨らんでいる。21年10〜12月期の営業費用は、前年同期比13%増の1339億5200万ドル(約15兆9200億円)となり、売上高の伸び率(9%)を上回った。

  • (このコラムは「JBpress Digital Innovation Review」2022年2月15日号に掲載された記事を基にその後の最新情報を加えて再編集したものです)